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トップページ社会保険労務士試験情報局ブログ版バックナンバー 2006/04/19
■労働基準法




■続、転勤命令は絶対的なものか?

従業員は会社の転勤命令を拒否することができるのかについて、今日は私の考えを書きたいと思います。

あくまで、私の考えなんで、この考え方が通説ではありませんので、ご注意くださいね。←先に予防線を・・・。(笑)

まず、入社時の労働契約を締結する際に「勤務地は神戸工場とし、転勤はなし」などとした場合のように、会社と従業員の間に勤務地を限定する特約がある場合には、例え従業員が勤務する支店を廃止する場合であっても、従業員の同意を得ることなく会社側が一方的に転勤を命じることはできません。

しかし、勤務地を限定する特約がなく、就業規則等に「業務上必要な場合は転勤を命じることができる」と規定されていれば、転勤命令についての包括的合意(将来に転勤命令があった場合には、その指示に従うという事前の合意)があったものとされ、原則として従業員は会社側の転勤命令に従わなければなりません。

よって、勤務地を限定する特約がなく、就業規則等に転勤を命じる根拠があるにもかかわらず、転勤命令を拒否した場合は懲戒処分の対象となり、場合によっては解雇することも可能となります。

最悪解雇まで可能だといっても、何度も従業員と話しあい、お互いに譲歩しあう姿勢も大切だと思います。

でないとネスレの事件のように泥沼の裁判になってしまいますから・・・。

しかし、転勤命令についての包括的合意があり、会社側の判断で転勤を命じることができるといっても次のような場合には、使用者側の「権利の濫用」として転勤命令が無効になる場合がありますので注意が必要です。

1.業務上の必要性がない場合
合理的な必要性があれば問題なく、「その人でなければダメだ」というような高度な必要性までは求められていません。

2.不当な動機で転勤を命じる場合
日ごろから何かと反抗する労働者に対する転勤命令やリストラに伴う嫌がらせの場合は、「権利の濫用」となります。

3.労働者に著しい不利益を負わせる場合
それぞれのケースにより異なりますが、「転勤により新婚早々別居生活になる場合」、「転勤により通勤時間が長くなり子供を保育園に連れて行く時間がなくなる場合」、「転勤により妻子を残して単身赴任となる場合」などのケースで裁判所は転勤命令を有効と判断しています。

私はこの3番目から考えて、今回のネスレ日本の事件に関しても、「病気や介護が必要である場合」でも、転勤先の病院や施設等で適切な治療や療養が可能であり、会社がそのことについて特に配慮していた場合は、会社側勝訴だと思っていました。

まだ、実際の判決文を読んでいませんので、会社側等の詳しい配慮等については、わかりませんが、一審、二審で会社側敗訴ということなんで「労働者に著しい不利益を負わせる」結果になっていたんでしょう。

以上

  

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