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■平成14年一般-第1問(賃金)

賃金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば、平成12年の賃金(現金給与総額)は、前年比0.5%増と3年ぶりに増加に転じた。これを、一般労働者とパートタイム労働者別にみると、それぞれ前年比1.1%増及び2.6%増となっている。平成13年版労働経済の分析(労働経済白書)では、このような現象を踏まえ、一般労働者に比べ賃金の低いパートタイム労働者の増加は、平均賃金を押し下げる効果を持っている、と分析している。

(B)厚生労働省「平成13年賃金引上げ等の実態に関する調査報告」(以下「賃上げ実態調査」という。)によれば、平成13年中に賃金の改定を実施又は予定している企業割合は2割強程度で、賃金の改定を実施しない企業割合は8割弱程度である。

(C)賃上げ実態調査によって、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素を見ると、「世間相場」とする企業割合が最も高く、次いで「企業業績」、「労働力の確保・定着」、「労使関係の安定」の順となっている。

(D)平成14年の春季労使交渉(春闘)において、金属労協(全日本金属産業労働組合協議会)傘下の労働組合に対して、一律に経営側から ベースアップゼロ及び定期昇給停止との回答がなされ、回答どおりの内容での妥結となった。しかも 、この妥結後に、あらためて賃金カッ トの提案を労働組合に行う企業も見られるなど労働者にとって厳しいものとなった。

(E)賃金カットは、労働条件の不利益変更に当たるが、定期昇給の停止は、定期昇給が就業規則に規定されていたとしても、賃金の基準そのものを不利益に変更するものではないので、就業規則を改定せずとも経営上の理由により、いかなる場合であっても実施可能である。



■解説

(A)正解
平成12年毎月勤労統計調査、平成13年版労働経済白書32ページ・44ページ
「毎月勤労統計調査」によれば、平成12年の平均月間現金給与総額は、前年比0.5%増の355,474円と3年ぶりの増加となった。
これを就業形態別にみると、一般労働者は421,195円、1.1%増となり、パートタイム労働者は95,226円、2.6%増であった。
そして、平成13年版労働経済白書では、パートタイム労働者の構成比の上昇は、平成12年は現金給与総額を0.6%程度押し下げる効果があったと分析している。

(B)誤り
平成13年賃金引上げ等の実態に関する調査報告
賃上げ実態調査によると、平成13年中に賃金の改定(定期昇給、ベースアップ、諸手当の改定等をいう。)を実施又は予定している企業割合は、76.0%となり、うち、1人当たり平均賃金を引き上げる企業割合は73.8%,1人当たり平均賃金を引き下げる企業割合は2.2%となっている。
また、賃金の改定を実施しない企業割合は21.3%となり,賃上げ実態調査で調査項目とした昭和50年以降最高となっている。
よって、「賃金の改定を実施又は予定している企業割合は2割強程度で、賃金の改定を実施しない企業割合は8割弱程度である」(賃金改定する予定の企業割合と賃金改定をしない企業割合の記述が反対)とした問題文は誤りである。

(C)誤り
平成13年賃金引上げ等の実態に関する調査報告
賃上げ実態調査によると、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素をみると、「企業業績」をあげた企業が72.6%、「世間相場」が17.2%、「労働力の確保・定着」が3.8%、「労使関係の安定」が2.1%、「物価の動向」が0.3%の順となっている。
よって、「世間相場とする企業割合が最も高く、次いで企業業績」とした問題文は誤りである。
なお、世間相場を重視した企業では、「同一産業同格企業」を最も参考にした割合が39.7%と最も高くなっている。

(D)誤り
2002年闘争評価と課題(平成14年7月25日金属労協発表)
平成14年度の春闘において、金属労協傘下のほとんどの組合では、定昇の実施等によって賃金構造維持分を確保し、現行賃金水準を維持することができた。
しかし、ベア要求については、産業状況を踏まえて自動車総連と造船重機労連を中心に取り組みを行ったが、ほとんどの組合でベアの有額回答に至ることができなかった。
よって、「一律に経営側から ベースアップゼロ及び定期昇給停止との回答がなされ、回答どおりの内容での妥結となった」とした問題文は誤りである。
なお、妥結後にあらためて賃金カットの提案を労働組合に提案する企業もあった。

(E)誤り
定期昇給が就業規則に規定されている場合(定期昇給の停止の規定はないものとする)には、使用者の一方的な判断で定期昇給を停止することはできず、定期昇給を停止するためには、その旨を記載した就業規則に変更する必要がある。
よって、「就業規則を改定せずとも経営上の理由により、いかなる場合であっても実施可能である」とした問題文は誤りである。
なお、就業規則は労使双方を拘束することになるので、定期昇給について規定されている就業規則の内容を「定期昇給を停止できる」旨の規定に変更することは、労働条件の不利益変更に該当し、合理的な理由がない場合には変更自体が無効となることも考えられる。

  

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