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トップページ過去問研究室(一般常識) 平成14年一般-第4問(労働関係諸法令)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成14年一般-第4問(労働関係諸法令)

次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、この問において「個別労働紛争解決促進法」とは「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」のことである。


(A)個別労働紛争解決促進法の目的は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争について、迅速かつ適正な解決を図ることである。解雇、労働条件の変更等の労働条件やセクシュアルハラスメント等に関する紛争はこの法律の対象になるが、労働者の募集及び採用に関する個々の求職者と事業主との間の紛争はこの法律の対象にならない。

(B)個別労働紛争解決促進法の施行状況を、平成13年10月からの3か月間の相談件数でみると、労働関係法令の違反を伴わない、民事上の個別労働関係紛争において、解雇に関するものが最も多く、次いで賃金等の労働条件の引下げに関するものが多かった。

(C)企業の常用労働者に対する過不足感を、厚生労働省「労働経済動向調査(平成14年2月調査)」でみると、調査産業計で「過剰」とする事業所の割合が「不足」とする事業所の割合を上回っており、前年11月調査時点よりも過剰感が強まっている。また、雇用調整を実施した事業所(平成13年10〜12月期実績)における雇用調整の実施方法としては「残業規制」とする事業所の割合が最も高く、次いで「配置転換」、「中途採用の削減・停止」の順となっている。

(D)本年3月に「ワークシェアリングについての基本的な考え方」に関する厚生労働大臣、日本経営者団体連盟会長及び日本労働組合総連合会会長の三者による合意が図られた。その中で、今後、政府、日本経営者団体連盟及び日本労働組合総連合会の三者は、これらを労使関係者に広く周知するとともに、ワークシェアリングの実施のための環境整備の具体化に向けて、更に検討を深めていくこととされた。

(E)「ワークシェアリングについての基本的な考え方」によると、我が国では、多様な働き方の選択肢を拡大する「多様就業型ワークシェアリング(正社員の短時間勤務や隔日勤務を導入するなど多様な働き方を実現するための手法)」の環境整備に早期に取り組むことが適当であり、また、当面の厳しい雇用情勢に対応するため、「緊急対応型ワークシェアリング(所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の減額を実施する手法)」を実施することが選択肢の一つである、としている。



■解説

(A)誤り
個別労働関係紛争解決促進法1条
個別労働関係紛争解決促進法は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争を含む。)について、あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とするとされている。
よって、「労働者の募集及び採用に関する個々の求職者と事業主との間の紛争はこの法律の対象にならない」とした問題文は誤りとなる。
なお、都道府県労働局長の当事者に対する助言及び指導の対象となる個別労働関係紛争からは、「労働関係調整法に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律に規定する特定独立行政法人等とその職員との間に発生した紛争」は除かれている。(法4条)
また、都道府県労働局長のあっせんの委任の対象となる個別労働関係紛争からは、「労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争」は除かれている。(法5条)

(B)正解
都道府県労働局における「個別労働紛争解決促進法」の施行状況(平成13年10月〜12月)
施行状況によれば、民事上の紛争の主な内容としては、解雇に関するものが最も多く29%、次いで、賃金等の労働条件の引下げに関するものが17%、退職勧奨、職場におけるいじめに関するものが5%となっている。
よって、問題文は正解となる。
なお、特徴としては、昨今の経済状況を反映して、リストラに関連するものが51%(普通解雇19%、整理解雇7%、労働条件の引下げ17%、退職勧奨5%、出向・配置転換3%)を占めているとし、さらに、いじめ・嫌がらせに関するものも多いとしている。

(C)正解
労働経済動向調査(平成14年2月)結果
調査結果によると、平成14年2月現在の常用労働者過不足判断D.I.(不足−過剰)により、企業の雇用過剰感の動向をみると、調査産業計ではマイナス15ポイントと平成13年11月の調査時(マイナス13ポイント)に引き続き過剰感が強まっているとしている。
また、平成13年10月〜12月期実績における雇用調整の実施方法(複数回答)は、調査産業計では、残業規制(15%)の割合が高く、次いで配置転換(9%)、中途採用の削減・停止(7%)としている。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
ワークシェアリングに関する政労使合意
政府、日本経営者団体連盟及び日本労働組合総連合会は、「ワークシェアリングについての基本的な考え方」について合意し、今後、三者は、これらを労使関係者に広く周知するとともに、ワークシェアリングの実施のための環境整備の具体化に向けて、更に検討を深めていくこととし、平成14年3月29日に「ワークシェアリングに関する政労使合意」を公表した。

(E)正解
ワークシェアリングについての基本的な考え方
「ワークシェアリングについての基本的な考え方」において、速やかに取り組むべきワークシェアリングの形として次のように述べている。
1.ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を図ることを目的として労働時間の短縮を行うものであり、雇用・賃金・労働時間の適切な配分を目指すものである。
2.我が国の経済社会の現状においては、雇用の維持・創出が強く求められる一方、生産性の向上が必要とされており、ワークシェアリングについても、これに資する形で実施することが必要である。また、ワークシェアリングは、個々の企業における労使の自主的な判断と合意により実施されることが必要である。
3.こうした観点から、我が国では、多様な働き方の選択肢を拡大する多様就業型ワークシェアリングの環境整備に早期に取り組むことが適当である。また、当面の厳しい雇用情勢に対応するため、緊急対応型ワークシェアリングについて緊急的な取り組みを行うことが選択肢の一つである。
よって、問題文は正解である。

  

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