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■平成15年一般-第4問(労働経済)

次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、この問において「白書」とは厚生労働省「平成14年版労働経済白書」のことである。


(A)総務省「労働力調査」によると、平成14年の我が国の完全失業率は年齢計で5.4%であるが、その中でも、特に若年層の完全失業率が高く、15〜19歳層及び20〜24歳層の完全失業率は、40〜59歳層の完全失業率の2倍以上となっている。

(B)白書によれば、我が国の新規学卒者の離職率の高さは「七五三」と言われるように、中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が、3年以内に最初の就職先を離職している、としている。さらに、若年者の失業率の上昇には、自発的な離職の増加が大きく影響しており、学卒採用時の環境が厳しいほど不本意な就職先に就職した者が多いため、将来の離職が増えると考えられる、としている。

(C)厚生労働省は、公共職業安定所に求職登録している学卒未就職者や早期離転職者をはじめとする35歳未満の若年者を、公共職業安定所の紹介により短期間の試行雇用(トライアル雇用)として受け入れる企業に対する支援を行い、その後の常用雇用への移行を義務づけることとしている。具体的には、若年者を短期間トライアル雇用する事業主に「試行雇用奨励金」が支給され、奨励金は、若年者1人につき1か月5万円で、最大6か月間支給される。(一部改正)

(D)白書によれば、失業のかなりの部分が労働力需給のミスマッチによって生じていると考えられる、とし、ミスマッチを、広い意味で、失業と求人が同時に存在しながら、それが結合しない状態とするならば、それが生じる理由としては、大きく、職業能力の不一致、情報の不完全性、労働者や企業の選好の三つが考えられる、と分析している。

(E)雇用対策法においては,事業主は労働者の募集及び採用について,その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならない、とする旨が規定されている。厚生労働省は、求人の年齢制限の対象とされがちな中高年齢者の求人を確保し、再就職を促進するために、平成15年1月に各都道府県労働局長あて、求人年齢制限緩和に関する取組みの充実についての通達を発出した。通達では、公共職業安定所で受理した求人のうち、「年齢不問」の求人の割合を、平成17年度に30%とすることを目標としている。(参考問題)



■解説

(A)正解
平成14年労働力調査
労働力調査によると、平成14年の平成14年の完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は5.4%と、前年に比べ0.4ポイント上昇し、比較可能な昭和28年以降で最高となっている。
なお、15歳〜19歳の層(12.8%)及び、20歳〜24歳の層(9.3%)の完全失業率は、40歳〜59歳の層(40歳〜44歳の層(3.7%)、45歳〜49歳(3.9%)、50歳〜54歳の層(4.1%)、55歳から59歳の層(4.5%))の完全失業率の2倍以上となっている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
平成14年版労働経済白書
労働経済白書によれば、我が国の新規学卒者の離職率の高さは「七五三」と言われるように、中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が、3年以内に最初の就職先を離職しているとし、若年の失業率が高いのは、転職志向の高まりといった意識の変化だけでなく、いわゆる「世代効果」、つまり学卒入職時点での就職環境の厳しさが、その後の離職率の高さに影響していると分析している。
よって、問題文は正解となる。

(C)誤り
雇用保険則110条の3
試行雇用奨励金は、職業経験、技能、知識等から就職が困難な特定の求職者層について、これらの者を一定期間試行雇用することにより、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、これらの者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的として支給されるものである。
受給できるのは、次のいずれかに該当しており、公共職業安定所に求職の申込をしている者のうち試行雇用(トライアル雇用)を経ることが適当であると公共職業安定所長が認める者を、公共職業安定所の紹介によりトライアル雇用として雇い入れた事業主であって一定の要件に該当するものとされている。
1.中高年齢者(トライアル雇用開始時に45歳以上65歳未満で、原則として雇用保険受給資格者であること)
2.若年者等(トライアル雇用開始時に35歳未満であること)
3.母子家庭の母等
4.障害者
5.日雇労働者
6.ホームレス
なお、受給できる額は、トライアル雇用者1人につき、月額40,000円とし、支給対象期間は最長3か月となっている。
よって、「その後の常用雇用への移行を義務づけることとしている」とした点、「1か月5万円で、最大6か月間支給される」とした点から問題文は誤りとなる。

(D)正解
平成14年版労働経済白書
労働経済白書によれば、失業のかなりの部分が労働力需給のミスマッチによって生じていると考えられ、ミスマッチを、広い意味で、失業と求人が同時に存在しながら、それが結合しない状態とするならば、それが生じる理由としては、大きく、職業能力の不一致、情報の不完全性、労働者や企業の選好の三つが考えられると分析している。
そして、その解決策を考えた場合、まず、職業能力の不一致に対しては、多様な教育訓練機会の確保のほか、キャリア・コンサルティングの充実や職業能力評価システムの開発などによる職業能力開発の充実が重要である。次に、情報の不完全性に対しては、安定所の機能の充実や労働力需給に関する官民の連携強化のほか、キャリア・コンサルティングの充実や職業能力評価システムの確立など、求職側の職業能力を求人側により正確に伝えるための取組みが重要である。さらに、第三の労働者や企業の選好については、綿密な職業相談のほか、ポジティブ・アクションの推進や年齢制限の緩和に向けた取組みが必要であると分析している。
よって、問題文が正解となる。

(E)正解とされていた
平成19年10月1日より、募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保が努力規定から義務規定に改正(雇用対策法10条)されたため、参考問題とする。
なお、出題当時の雇用対策法の規定においては、事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならないとされていた。(改正前の雇用対策法7条)
そして、厚生労働省は、求人の年齢制限の対象とされがちな中高年齢者の求人を確保し、再就職を促進するために、平成15年1月22日に各都道府県労働局長あて、「求人年齢制限緩和に関する取組みの充実について(平成15年1月22日職発0122001号)」の通達を発出した。
通達では、公共職業安定所で受理した求人のうち、「年齢不問」の求人の割合を、平成17年度に30%とすることを目標としていた。
これは、求人年齢制限緩和の促進のためには、これまでの年齢と深く結びついた雇用慣行の見直しを含め、広く社会全体にその意義と必要性の浸透を図りつつ、労使の理解と協力を得て、着実かつ計画的に取組みを進めていく必要があり、このため、確実に実現すべき目標として、平成17年度には、現状(13%)の倍程度の30%とすることとしたものであるとされていた。
よって、問題文は正しい肢であった。

  

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