社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(一般常識) 平成15年一般-第5問(労働関係諸法令)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成15年一般-第5問(労働関係諸法令)

次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)雇用対策法第1条においては、国が雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成とに資すること等を同法の目的とする旨が規定されており、厚生労働大臣の指針において、完全雇用水準を完全失業率が概ね2%以下と明記している。

(B)総務省「労働力調査」によると、平成14年平均の非労働力人口数、完全失業者数、完全失業率のいずれもが、調査開始(昭和28年)以来の過去最大の数値となった。

(C)使用者は、労働組合法第7条の規定により不当労働行為を行うことが禁止されており、これに違反した使用者は、当該不当労働行為を行ったことを構成要件とする労働組合法第28条の罰則規定に基づき、1年以下の禁こ若しくは100万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科される。(一部改正)

(D)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律及び同法施行規則によると、公共職業安定所長は、定年や継続雇用制度がある場合における当該制度の定めるところによる退職により離職することとなっている高年齢者等の職業の安定を図るために必要があると認めるときは、当該高年齢者等を雇用している事業主に対して、再就職援助計画の作成を要請することができるが、当該高年齢者等が解雇により離職する場合には要請することはできない。(参考問題)

(E)「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」旨の最高裁判所の判決があるが、法令による制限がない現状においては、使用者の採用の自由が保障されており、誰を採用するかは、使用者の自由である。



■解説

(A)誤り
雇用対策法1条
雇用対策法は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的としている。
よって、問題文の内容とは異なる。
また、この目的に対する厚生労働大臣の指針はなく、「厚生労働大臣の指針において、完全雇用水準を完全失業率が概ね2%以下と明記している」とした点からも問題文は誤りとなる。

(B)正解
平成14年労働力調査
平成14年平均の非労働力人口は4,229万人、完全失業者数は359万人、完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は5.4%となっており、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。
よって、問題文は正解である。

(C)誤り
労働組合法28条
使用者の不当労働行為があったとしても、労働組合法に基づく罰則規定が適用されるわけではなく、不当労働行為に対する労働委員会の救済命令等の全部又は一部が確定判決によって支持された場合に、その違反があったときは、その行為をした者は、1年以下の禁錮若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることになっている。
よって、「当該不当労働行為を行ったことを構成要件とする労働組合法第28条の罰則規定に基づき」とした問題文は誤りである。

(D)誤りだった
旧高年齢者雇用安定法17条1項
解雇(自己の責めに帰すべき事由によるものは除く)であっても、再就職援助計画の作成を要請することができたので、「解雇により離職する場合には要請することはできない」とした問題文が誤りだったが、平成16年12月1日から再就職援助計画に関する規定が廃止されたため参考問題とする。
なお、再就職援助計画の作成の規定の廃止に伴い、事業主は、解雇等(自己の責めに帰すべき事由によるものは除く)により離職することとなった高年齢者等が希望するときは、その円滑な再就職を促進するため、求職活動支援書を作成し、高年齢者等に交付しなければならないことになっている。(法17条)

(E)誤り
労働基準法56条、男女雇用機会均等法7条、三菱樹脂事件(昭和48年12月12日最高裁判決)
採用試験の時に学生運動の参加について尋ねられこれを否定したが、後日の会社側の調査により学生運動に参加していたという事実が判明したため、試用期間満了に際し、本採用を拒否された者が、「会社による本採用の拒否は被用者の思想・信条の自由を侵害するもの」として争った訴訟で、最高裁判所は、「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」と判断した。
なお、使用者には原則として雇入れの自由があるが、労働基準法での最低年齢の規定や男女雇用機会均等法による募集・採用の規定など、法令による制限があるために、「法令による制限がない現状においては、使用者の採用の自由が保障されており、誰を採用するかは、使用者の自由である」とした問題文は誤りである。

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(一般常識)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved