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■平成18年一般-第1問(労働経済)

次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、この問において、「白書」とは「平成17年版労働経済白書」のことである。


(A)白書によれば、我が国が取り組むべき大きな課題として、人口減少と少子高齢化への対応があるとし、また、2007年以降には、経済成長に大きく貢献してきた「団塊の世代」(1947〜49年生まれ)の多くが企業での引退過程を迎えることとなる、としている。

(B)白書によれば、労働力供給が制約される中で、企業は、より望ましい雇用管理を構築し、労働者の意欲と能力を十分に引き出していかなくてはならない、今まで企業は、従業員の年齢構成の高齢化に伴って、年功的な賃金構造を維持しようとすると多くの労務コストを必要としたが、2007年以降、団塊の世代が引退過程を迎えると、今までのコスト負担は低下し、むしろ余裕を生じさせることになり、現在の賃金構造を前提とすると、企業の労務コストは10年間の累計で約88兆円の剰余が生じる、と試算している。

(C)白書によれば、厚生労働省が(株)UFJ総合研究所に委託調査した「若年者のキャリア支援に関する実態調査」において正社員を対象として行った調査項目をみると、「職業生活・キャリア形成に関する主な相談相手」では、「職場の上司・先輩」が50%、「職場の同僚」が37%、「学校時代の友達」が36%、「家族・親戚」が33%の順となっており、「職業生活を考える上でモデルになる人」では、「職場の上司・先輩」が58%、「家族・親戚」が18%の順となっている。このことから、職場において若年者のそれぞれのキャリアについての相談相手となり、労働者の持つ能力を最大限に発揮させる支援ができる人の存在が重要になろう、としている。

(D)白書によれば、内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」において、60歳代の人の理想の引退年齢について、65歳以上とした者の割合は、日本では8割以上を占めているのに対して、韓国、アメリカ、ドイツ、スウェーデンでは5割以下になっており、我が国の高齢者の理想引退年齢が高いのが特徴的である、としている。

(E)白書によれば、日本労働研究機構の「育児や介護と仕事の両立に関する調査」において、「仕事と育児を両立しやすくするために推進すべきと考える施策」をみると、女性の雇用者では「労働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の推進」が31%、次いで「保育所の整備」が21%の順になっており、男性の雇用者では「男性が育児に参加することへの職場や社会環境の整備」が37%、「労働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の推進」が22%の順となっており、こうしたことから、仕事と育児の両立については男性、女性の協力は当然のことながら、企業における働き方の見直しや両立支援の取組が求められていることがわかる、としている。



■解説

(A)正解
平成17年版労働経済白書(236ページ)
労働経済白書では、「今後、持続的な成長に支えられた経済社会の発展を実現していくために、我が国が取り組むべき大きな課題として、人口減少と少子高齢化への対応がある。推計では、総人口は2006年をピークに減少すると見込まれ、2007年以降には、経済成長に大きく貢献してきた「団塊の世代」(1947〜49年生まれ)の多くが企業での引退過程を迎えることとなる。我が国は、総人口の面からみても、人口構造の面からみても、ここ数年のうちに大きな変化に直面することとなる。」としている。
よって、問題文は正解である。

(B)正解
平成17年版労働経済白書(242ページ)
労働経済白書では、「労働力供給が制約される中で、企業は、より望ましい雇用管理を構築し、労働者の意欲と能力を十分に引き出していかなくてはならない。今まで企業は、従業員の年齢構成の高齢化に伴って、年功的な賃金構造を維持しようとすると多くの労務コストを必要とした。しかし、2007年以降、団塊の世代が引退過程を迎えると、今までのコスト負担は低下し、むしろ余裕を生じさせることになる。仮に、現在の賃金構造を前提とすると、企業の労務コストは、毎年、約1兆円ずつ減少していき、 10年間の累計で約88兆円の剰余が生じる」としている。
よって、問題文は正解である。

(C)正解
平成17年版労働経済白書(162ページ)
労働経済白書では、「UFJ総合研究所「若年者のキャリア支援に関する実態調査(厚生労働省委託)」により職業生活・ キャリア形成に関する主な相談相手をみると、「職場の上司・先輩」が50.4%、「職場の同僚」が36.9%、「学校時代の友達」が35.6%、「家族・親戚」が32.5%の順に続いている。さらに同調査により職業生活を考える上でモデルになる人をみると、「職場の上司・先輩」が57.7%と割合が最も高く、次いで「家族・親戚」が18.3%となっておりモデルになる人については「職場の上司・先輩」が圧倒的に高い割合となっている。このことから、職場において若年者のそれぞれのキャリアについての相談相手となり、労働者の持つ能力を最大限に発揮させる支援ができる人の存在が重要になろう。」としている。
よって、問題文は正解である。

(D)誤り
平成17年版労働経済白書(163ページ)
労働経済白書では、「内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、60歳代の人の理想の引退年齢については、日本において65歳ぐらいと回答した者が全体の40.3%、70歳ぐらいと回答した者が全体の31.3%と高水準となっており、65歳以上とした者は全体の8割以上を占める。一方、調査対象国となっているアメリカ、ドイツ、スウェーデン及び韓国と比べると、韓国においては日本同様に高水準であるが、その他のアメリカ、ドイツ、スウェーデンなどの欧米諸国と比較すると我が国の高齢者の理想引退年齢が高いのが特徴的である。」としている。
よって、韓国については日本同様に高水準であるとされており、理想の引退年齢について65歳以上とした者の割合が「欧米諸国と同様に5割以下」とした問題文は誤りである。

(E)正解
平成17年版労働経済白書(189・190ページ)
労働経済白書では、「日本労働研究機構「育児や介護と仕事の両立に関する調査」において仕事と育児の両立にいてみると、約6割の女性が不満を抱いており、「うまく両立できている」と回答した割は全体の28%にとどまっている。次に同調査により仕事と育児を両立しやすくするために推進すべきと考える施策についてみると、女性の雇用者においては労働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の推進」が30.6%と最も高い割合となっており、次いで「保育所の整備」が20.6%となっている。また、同様に男性の雇用者についてみると「男性が育児に参加することへの職場や社会環境の整備」 が37.3%と最も高く、次いで「労働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の推進」が21.8%となっている」とし、また、「こうしたことから仕事と育児の両立については男性、女性の協力は当然のことながら、企業における働き方の見直しや両立支援の取組が求められていることがわかる。例えば短時間正社員など多様な働き方の導入を目指す多様就業型ワークシェアリング等の導入が促進されることが望ましい。」としている。
よって、問題文は正解である。

  

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