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■平成30年一般-第10問(社会保障全般)

次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、本問は、平成29年版厚生労働白書を参照している。

(A)我が国の国民負担率(社会保障負担と租税負担の合計額の国民所得比)は、昭和45年度の24.3%から平成27年度の42.8%へと45年間で約1.8倍となっている。

(B)第190回国会において成立した「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」では、私的年金の普及・拡大を図るため、個人型確定拠出年金の加入者範囲を基本的に20歳以上60歳未満の全ての方に拡大した。

(C)年金額については、マクロ経済スライドによる調整をできるだけ早期に実施するために、現在の年金受給者に配慮する観点から、年金の名目額が前年度を下回らない措置(名目下限措置)は維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で、前年度までの未調整分(キャリーオーバー分)を含めて調整することとした。この調整ルールの見直しは、平成30年4月に施行された。

(D)年金積立金の運用状況については、年金積立金管理運用独立行政法人が半期に1度公表を行っている。厚生労働大臣が年金積立金の自主運用を開始した平成11年度から平成27年度までの運用実績の累積収益額は、約56.5兆円となっており、収益率でみると名目賃金上昇率を平均で約3.1%下回っている。

(E)国民健康保険制度の安定化を図るため、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律が平成27年5月に成立した。改正の内容の1つの柱が、国民健康保険への財政支援の拡充等により、財政基盤を強化することであり、もう1つの柱は、都道府県が安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等の国民健康保険の運営に中心的な役割を担うことである。



■解説

(A)正解
平成29年版厚生労働白書
我が国の国民負担率(社会保障負担と租税負担の合計額の国民所得比)は、1970(昭和45)年度の24.3%から2015(平成27)年度の42.8%へと45年間で約1.8倍となっている。
こうした国民負担率の増加の内訳を租税負担率と社会保障負担率とに分けて見ると、租税負担率は1970年度の18.9%からバブル期を経た1990(平成2)年度には27.7%に達したが、その後のバブル崩壊や「リーマン・ショック」後の不況などによる影響で租税負担率は伸びず、2015年度では25.5%と1990年度の水準より低く、1970年度と比較しても約1.3倍の伸びにとどまっている。一方で、社会保障負担率は1970年度の5.4%からほぼ一貫して上昇しており、2015年度では17.3%と45年間で3倍超となっている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
平成29年版厚生労働白書
確定拠出年金については、社会保障審議会企業年金部会での議論等を踏まえた「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が、第190回国会において成立した。本改正では、私的年金の普及・拡大を図るため、個人型確定拠出年金の加入者範囲を基本的に20歳以上60歳未満の全ての方に拡大したほか、中小企業でも実施しやすい簡易型確定拠出年金の創設、企業年金を実施できない事業主の方でも従業員の自助努力を支援できるようにする小規模事業主掛金納付制度の創設等を行うこととしている。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
平成29年版厚生労働白書
マクロ経済スライドは、少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が過重なものとならないように、保険料の上限を固定し、その限られた財源の範囲内で年金の給付水準を徐々に調整する仕組みとして導入されたものであり、賃金・物価がプラスの場合に限り、その伸びを抑制する形で年金額に反映させるものである。マクロ経済スライドによる調整をより早く終了することができれば、その分、将来年金を受給する世代(将来世代)の給付水準が高い水準で安定することになる。このため、マクロ経済スライドによる調整をできるだけ早期に実施するために、現在の年金受給者に配慮する観点から、年金の名目額が前年度を下回らない措置(名目下限措置)は維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で、前年度までの未調整分(キャリーオーバー分)を含めて調整することとした。このマクロ経済スライドによる調整ルールの見直しは、2018(平成30)年4月に施行された。
よって、問題文は正解となる。

(D)誤り
平成29年版厚生労働白書
年金積立金の運用状況については、長期的な観点から評価することが必要であるが、透明性を確保する観点から、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法)は四半期ごとに公表を行っている。また、年金積立金の一部は、年金給付等の資金繰り上必要な資金として年金特別会計において管理し、財政融資資金への預託による運用を行っている。これらを合計した年金積立金全体の運用実績には、厚生労働大臣が自主運用を開始した2001(平成13)年度から2015(平成27)年度までの累積で約56.5兆円となっており、収益率でみると名目賃金上昇率を平均で約3.1%上回り、年金財政に貢献していると言える。
よって、「半期に1度公表」、「厚生労働大臣が年金積立金の自主運用を開始した平成11年度」、「約3.1%下回っている」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
平成29年版厚生労働白書
国民皆保険を支える重要な基盤である国民健康保険制度の安定化を図るため、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律(以下「国保法等一部改正法」という。)が2015(平成27)年5月に成立、公布された。改革の内容の一つの柱は、国民健康保険への財政支援の拡充等により、財政基盤を強化することである。具体的には、既に2015年度から低所得者対策の強化のため、保険者支援制度を拡充していることに加え、2018(平成30)年度以降は、保険者努力支援制度により医療費適正化を進める保険者を支援することや財政調整機能を強化する等、更に約1,700億円の財政支援を予定している。改革内容のもう一つの柱は、2018年度から、都道府県が安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等の国民健康保険の運営に中心的な役割を担うことである。具体的には、都道府県は、保険給付に要した費用を全額、市町村に対して交付するとともに、市町村から国民健康保険事業費納付金を徴収し、財政収支の全体を管理することとなる。また、都道府県は、都道府県内の統一的な国民健康保険の運営方針を定め、医療保険と医療提供体制の両面をみながら、地域の医療の充実を図り、効率的かつ質の高い医療を提供できるよう取り組んでいくこととなる。一方で、市町村は、資格管理、保険料の賦課徴収、保健事業等、地域におけるきめ細かい事業を引き続き担うこととなる。
よって、問題文は正解となる。

  

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