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トップページ過去問研究室(健康保険法) 令和1年健保-第9問(法令全般関係)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■令和1年健保-第9問(法令全般関係)

健康保険法に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

(ア)被保険者の1週間の所定労働時間の減少により資格喪失した者が、事業所を退職することなく引き続き労働者として就労している場合には、任意継続被保険者になることが一切できない。

(イ)任意継続被保険者が、健康保険の被保険者である家族の被扶養者となる要件を満たした場合、任意継続被保険者の資格喪失の申出をすることにより被扶養者になることができる。

(ウ)同一の事業所においては、雇用契約上一旦退職した者が1日の空白もなく引き続き再雇用された場合、退職金の支払いの有無又は身分関係若しくは職務内容の変更の有無にかかわらず、その者の事実上の使用関係は中断することなく存続しているものであるから、被保険者の資格も継続するものであるが、60歳以上の者であって、退職後継続して再雇用されるものについては、使用関係が一旦中断したものとみなし、当該事業所の事業主は、被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出することができる。

(エ)3か月間の報酬の平均から算出した標準報酬月額(通常の随時改定の計算方法により算出した標準報酬月額。「標準報酬月額A」という。)と、昇給月又は降給月以後の継続した3か月の間に受けた固定的賃金の月平均額に昇給月又は降給月前の継続した12か月及び昇給月又は降給月以後の継続した3か月の間に受けた非固定的賃金の月平均額を加えた額から算出した標準報酬月額(以下「標準報酬月額B」という。)との間に 2 等級以上の差があり、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合であって、現在の標準報酬月額と標準報酬月額Bとの間に1等級以上の差がある場合は保険者算定の対象となる。

(オ)4月、5月、6月における定時決定の対象月に一時帰休が実施されていた場合、7月1日の時点で一時帰休の状況が解消していれば、休業手当等を除いて標準報酬月額の定時決定を行う。例えば、4月及び5月は通常の給与の支払いを受けて6月のみ一時帰休による休業手当等が支払われ、7月1日の時点で一時帰休の状況が解消していた場合には、6月分を除いて4月及び5月の報酬月額を平均して標準報酬月額の定時決定を行う。

(A)(アとイ)
(B)(アとエ)
(C)(イとウ)
(D)(ウとオ)
(E)(エとオ)



■解説

(ア)誤り
法3条4項
適用事業所に使用されなくなったため、又は適用除外に該当したため被保険者(日雇特例被保険者を除く。)の資格を喪失した者が、喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者(日雇特例被保険者、任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であったときは、任意継続被保険者になることができる。
よって、「任意継続被保険者になることが一切できない。」とした問題文は誤りとなる。
なお、任意適用事業の脱退により資格を喪失した者は、任意継続被保険者にはなれない。(昭和3年8月17日保理第2059号)

(イ)誤り
法38条
任意継続被保険者は、次のいずれかに該当するに至った日の翌日(第4号から第6号までのいずれかに該当するに至ったときは、その日)から、その資格を喪失することになっている。そして、次の6つのいずれかに該当しない場合は、申し出により任意継続被保険者の資格を喪失することができない。
1.任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき。
2.死亡したとき。
3.保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を納付期日までに納付しなかったとき(納付の遅延について正当な理由があると保険者が認めたときを除く。)。
4.被保険者となったとき。
5.船員保険の被保険者となったとき。
6.後期高齢者医療の被保険者等となったとき。
よって、問題文は誤りとなる。
なお、保険料を納付期日までに納付しなかったときは、納期限の翌日に資格喪失となるためその日以後は、被扶養者の要件を満たしていれば被扶養者になることが可能である。

(ウ)正解
法36条、平成25年1月25日保保発0125第1号
健康保険法及び厚生年金保険法においては、一定の事業所に使用される者が事業主との間に事実上の使用関係が消滅したと認められる場合にその被保険者の資格を喪失するものと解されており、同一の事業所においては雇用契約上一旦退職した者が1日の空白もなく引き続き再雇用された場合は、退職金の支払いの有無又は身分関係若しくは職務内容の変更の有無にかかわらず、その者の事実上の使用関係は中断することなく存続しているものであるから、被保険者の資格も継続するものとされている。
ただし、60歳以上の者で、退職後継続して再雇用されるものについては、使用関係が一旦中断したものと見なし、事業主から被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出させる取扱いとして差し支えないこととされている。
なお、この場合においては、被保険者資格取得届にその者が退職をした後、新たな雇用契約を結んだことを明らかにできる書類(事業主の証明書等)を添付する必要がある。
よって、問題文は正解となる。

(エ)誤り
法43条1項、平成30年3月1日保保発0301第2号
3か月間の報酬の平均から算出した標準報酬月額(通常の随時改定の計算方法により算出した標準報酬月額)と、昇給月又は降給月以後の継続した3か月の間に受けた固定的賃金の月平均額に昇給月又は降給月前の継続した9か月及び昇給月又は降給月以後の継続した3か月の間に受けた非固定的賃金の月平均額を加えた額から算出した標準報酬月額(年間平均額から算出した標準報酬月額)との間に2等級以上の差があり、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合であって、現在の標準報酬月額と年間平均額から算出した標準報酬月額との間に1等級以上の差がある場合は、保険者算定の対象となる。
よって、「昇給月又は降給月前の継続した12か月」とした問題文は誤りとなる。

(オ)正解
法41条1項、「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について(平成29年6月2日事務連絡)
定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月がある場合、標準報酬月額の決定に当たって、一時帰休の状態が解消しているかどうかは7月1日の時点で判断することとされている。
7月1日の時点で一時帰休の状態が解消している場合は、通常の給与を受けた月における報酬の平均により、標準報酬月額を算出する。例えば4・5月に通常の給与を受けて6月に休業手当等を受けた場合、4・5月の報酬の平均を「9月以降において受けるべき報酬」として定時決定を行う。
なお、7月1日の時点で一時帰休の状態が解消していない場合、例えば、定時決定の対象月である4・5・6月のうち、4・5月は通常の給与の支払を受けて6月のみ一時帰休による休業手当等が支払われた場合には、6月分は休業手当等を含めて報酬月額を算定した上で、4・5・6月の報酬月額を平均して標準報酬月額を決定する。
よって、問題文は正解となる。

  

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