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■平成14年健保-第5問(保険料)

保険料に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)被保険者の使用されている事業所が譲渡によって事業主に変更があったとき、保険者は事業主が変更する前の保険料については、納期前であっても保険料のすべてを徴収することができる。

(B)育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う 労働者の福祉に関する法律に基づく育児休業等期間中の保険料については、事業主が保険者に申出することにより、その育児休業等を開始した日の属する月の翌月からその育児休業等が終了する日の属する月の前月までの被保険者及び事業主が負担すべき保険料について免除される。(一部改正)

(C)健康保険組合が規約の定めるところにより標準賞与額に係る保険料を徴収する場合、被保険者負担分に係る国庫補助の割合は、政府管掌健康保険の標準賞与額に係る保険料と同じである。(一部改正)

(D)健康保険組合における調整保険料は、各月の各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に調整保険料率を乗じた額であるが、調整保険料率は、各健康保険組合が交付金の交付に要する費用並びに組合の組合員である被保険者の数並びに標準報酬を基礎として算定する。(一部改正)

(E)社会保険庁長官は厚生労働大臣に対して政府管掌健康保険の保険料率の引き上げを申し出ることができるが、その申し出による保険料率の引き上げは、保険給付の改善、診療報酬の改定又は老人保健拠出金の増額を伴う場合のみに限られる。



■解説

(A)正解
法172条3号、昭和5年11月5日保理513号
現に被保険者を使用しつつある工場又は事業場において譲渡により事業主に変更があったとき、前事業主は、工場又は事業場における財産のほか他に何の財産も有しない場合が多く、従って事業主変更前の保険料を法定納期限翌月末日までまって徴収しようとしても本人は無財産のために徴収不能の結果を生ずることは明白であり、このような場合には、前事業主経営の工場又は事業場はこれを廃止したのと同一の結果を生ずるので、被保険者の使用される事業所が廃止されたときに該当するものとして繰上徴収して差し支えないとされている。

(B)誤り
法159条
保険料が免除されるのは「その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」とされている。
よって、「終了する日が属する月の前月まで」とした問題文は誤りである。

(C)誤り
法153条
国庫は、政府管掌健康保険の被保険者(日雇特例被保険者は除く)に係る療養の給付(一部負担金相当分は控除される)、入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、出産手当金、家族療養費、家族訪問看護療養費、高額療養費、家族移送費の支給にようする費用に1000分の164から1000分の200までの範囲内において政令で定める割合(法附則5条により100分の130とされている)を乗じて得た額を補助する。
また、国庫は健康保険の保険者である政府が拠出すべき老人保健法の規定による医療費拠出金及び介護納付金(両方とも日雇特例被保険者に係るものは除く)に100分の164(法附則5条)を乗じて得た額を補助するとされている。
よって、政府管掌健康保険及び組合管掌健康保険ともに、標準賞与額の負担に対する国庫補助は規定されていない。
なお、平成15年4月1日の法改正前については、政府管掌健康保険においては賞与等から特別保険料が徴収(健康保険組合の場合は規約で定めることにより徴収できた)されており、その特別保険料の被保険者負担分の5分の2に相当する額について国庫補助が行われていが(健康保険組合に対しては行われていなかった)、法改正により総報酬制が導入されたことに伴い廃止された。

(D)誤り
法附則2条4項・5項
調整保険料額は、各月につき、各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ調整保険料率を乗じて得た額とされている。
調整保険料率については、交付金の交付に要する費用並びに組合の組合員である被保険者の数及び標準報酬を基礎として、政令(令67条)で定めることになっており、具体的には次の計算式で定められている。

調整保険料率=基本調整保険料率×修正率

なお、基本調整保険料率は、交付金総額の見込額を全組合の標準報酬月額及び標準賞与額の総額の見込み額で除して得た率として厚生労働大臣が定め、修正率については、各組合の見込所要保険料率の全組合平均の見込み所要保険料率に対する比率を基準として健康保険組合連合会が定めることになっている。
よって、問題文では調整保険料率を定めるのが「各健康保険組合」となっており誤りである。

(E)誤り
法160条4項・5項・6項
社会保険庁長官は、一般保険料率が基準に適合しないことが明らかになったときは、厚生労働大臣に対し、一般保険料率の変更について申出をすることができるが、一般保険料率の引上げに係る申出については、保険給付の内容の改善又は診療報酬の改定を伴う場合や老人保健拠出金若しくは退職者給付拠出金の増加に伴いその納付に必要がある場合又は一般保険料額の総額の減少を補う必要がある場合に行うことができるものとされている。
問題文の場合は、「保険料率」として一般保険料率に限定していない点、一般保険料の引上げについて「退職者給付拠出金の増加に伴う場合」、「一般保険料額の総額の減少を補う必要がある場合」について書かれていない点から誤りとなる。

  

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