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■平成21年健保-第6問(健康保険法の保険給付)

保険給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)被扶養者が6歳に達する日以後の最初の3月31日の翌日以後であって70歳に達する日の属する月以前である場合、家族療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)の100分の70である。

(B)傷病手当金の待期期間は、最初に療養のため労務不能となった場合のみ適用され、その後労務に服し同じ疾病又は負傷につきさらに労務不能になった場合は待期の適用は行われない。

(C)現に海外にある被保険者からの療養費等の支給申請は、原則として、事業主等を経由して行わせるものとし、その支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いて算定した療養費等を保険者が直接当該被保険者に送金することになっている。

(D)70歳未満で上位所得者に該当する被保険者が、療養のあった月以前の12か月以内に既に高額療養費を支給された月数が3か月以上あるときは、高額療養費算定基準額が83,400円に減額される。

(E)自動車事故にあった被保険者に対して傷病手当金の支給をする前に、加害者が当該被保険者に対して負傷による休業に対する賠償をした場合、保険者はその損害賠償の価額の限度内で、傷病手当金の支給を行う責めを免れる。



■解説

(A)正解
法110条2項
被扶養者が6歳に達する日以後の最初の3月31日の翌日以後であって70歳に達する日の属する月以前である場合の家族療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)の100分の70とされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、被扶養者が6歳に達する日以後の最初の3月31日以前である場合の給付率は100分の80、被扶養者が70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合の給付率は100分の80(平成26年3月31日以前に70歳に達している者は100分の90、また被保険者の所得が一定以上のときは100分の70)とされている。

(B)正解
法99条、昭和2年3月11日保理1085号
疾病又は負傷につき最初に療養のため労務不能となった場合のみ待期が適用され、その後労務に服し(医師の指示の有無を問わない)その疾病又は負傷につきさらに労務不能になった場合は待期の適用がない。
よって、問題文は正解となる。
例えば、1月3日から1月5日まで3日間、1月7日から1月9日まで3日間、1月11日から1月12日まで2日間、同一の疾病または負傷のため労務不能のときは、1月3日から5日までにおける待期の完成により、1月7日、8日、9日、11日、12日の5日間は、傷病手当金の支給を受けることが可能である。

(C)誤り
法87条1項、昭和56年2月25日保険発第10号・庁保険発第2号
現に海外にある被保険者からの療養費等の支給申請は、原則として、事業主等を経由して行なわせ、その受領は事業主等が代理して行なうものとし、国外への送金は行なわないこととされている。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
海外療養費の申請手続(昭和56年2月25日保険発第10号・庁保険発第2号)
1.療養費支給申請書等に添付する証拠書類が外国語で記載されている場合は、日本語の翻訳文を添付すること。
2.療養費支給申請書等の証拠書類に添付する翻訳文には翻訳者の氏名及び住所を記載させること。
3.海外における療養費の支給申請書に添付させる証拠書類の様式は、別添6「診療内容明細書」及び同6「領収明細書」を参考にすること。
4.現に海外にある被保険者からの療養費等の支給申請は、原則として、事業主等を経由して行なわせ、その受領は事業主等が代理して行なうものとし、国外への送金は行なわないこと。なお、療養費等の受領が事業主又は事業主の代理人に委任された場合は、当該療養費等の授受の状況を明らかにしておくよう指導すること。
5.現に海外にある被保険者の療養費等の支給に係る照会は、事業主等を経由して行なうこと。
6.海外における療養費等の支給額の算定に用いる邦貨換算率は、その支給決定日の外国為替換算率(売りレート)を用いること。

(D)正解
法115条、令43条1項
70歳未満で上位所得者(療養のあった月の標準報酬月額が53万円以上の被保険者又はその被扶養者)に該当する場合で被保険者が、当該療養のあった月以前の12月以内に既に高額療養費が支給されている月数が3月以上ある場合(高額療養費多数回該当の場合)にあっては、高額療養費算定基準額は83,400円となる。
よって、問題文は正解となる。
なお、70歳未満で一般区分の場合は44,000円、低所得者区分の場合は24,600円となる。

(E)正解
法57条2項
保険者は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、保険給付を受ける権利を有する者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得することになっている。この場合において、保険給付を受ける権利を有する者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れることになっている。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
法57条(損害賠償請求権)の制度趣旨

第三者の行為(例えば交通事故などの場合)によって生じた保険給付事由に対して保険給付が行われると、被保険者はその部分については損害が補填されたことになり、その限度においては第三者から損害賠償を受ける必要はなくなる。
しかし、被保険者が第三者からその部分についても損害賠償を受ければ、損害が二重に補填されたことになり、また、第三者から損害賠償を受けなければ、第三者は保険給付された部分に関する損害賠償額について結果的に不当利得を得たことになる。
また、第三者からすでに損害賠償を受けているにもかかわらず、保険給付を受けた場合は、被保険者は損害を二重に補填されることになる。
このような不合理を是正するために、損害賠償を受ける前に保険給付を受けた場合には「損害賠償請求権の代位取得」規定を、損害賠償を受けた後に同一事由について保険給付を受けようとする場合には「保険給付の免責」規定を設けている。

  

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