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トップページ過去問研究室(健康保険法) 平成23年健保-第9問(健康保険の現金給付)
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■平成23年健保-第9問(健康保険の現金給付)

健康保険の現金給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)傷病手当金は、療養のため労務に服することができないときに支給されるが、その場合の療養は、健康保険で診療を受けることができる範囲内の療養であれば、保険給付として受ける療養に限らず、自費診療で受けた療養、自宅での療養や病後の静養についても該当し、傷病手当金は支給される。

(B)傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の傷病により障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金が優先して支給される。ただし、その障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由により障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金額と当該障害基礎年金額との合算額)を360で除して得た額が、傷病手当金の額より多いときは、その差額を支給する。

(C)日雇特例被保険者に対する傷病手当金の支給に当たっては、労務不能となった際にその原因となった傷病について療養の給付を受けていることで足り、労務不能期間のすべてにおいて当該傷病につき療養の給付を受けていることを要しない。

(D)介護休業期間中に病気にかかり、その病気の状態が勤務する事業所における労務不能の程度である場合には、傷病手当金が支給される。この場合、同一期間内に事業主から介護休業手当等で報酬と認められるものが支給されているときは、傷病手当金の支給額について調整を行うこととされている。

(E)被保険者が移送費の支給を受けようとするときは、申請書に、移送に要した費用の額を証する書類、医師又は歯科医師の意見書等を添付して、保険者に提出しなければならない。



■解説

(A)正解
法99条
傷病手当金の支給要件である「療養のための労務不能要件」は、健康保険で診療を受けることができる範囲内の療養であれば、保険給付として受ける療養に限らず、自費診療で受けた療養、自宅での療養や病後の静養についても該当することとされている。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
療養のための労務不能要件

1.保険給付として受ける療養のためにのみ限らず、然らざる療養のためをも含む。(昭和2年2月26日保発第345号)
2.自費で傷病の療養をなした場合でも、その傷病の療養のため労務に服することができないことについて相当の証明があるときは支給する。(昭和3年9月11日事発第1811号)
3.医師又は歯科医師について療養を受けない場合でも支給される場合がある。これには、病後静養した期間、疾病にかかり医師について診察を受くべく中途に費した期間等を含むが、この期間については、医師の意見書、事業主の証明書等を資料として正否を判定する。(昭和2年4月27日保発第345号)
4.療養は必ずしも保険医について診療を受けた場合にかぎらず、また、資格喪失後労務に服することができぬ期間についても支給し得る。(昭和4年2月20日保理第489号)
5.病原体保有者に対する法第1条の適用に関しては、原則として病原体の撲滅に関し特に療養の必要があると認められる場合は、自覚症状の有無にかかわらず伝染病の病原体を保有することをもって保険事故たる疾病と解するものであり、従って病原体保有者が隔離収容等のため労務に服することができないときは、傷病手当金の支給対象になる。(昭和29年10月25日保険発第261号)
6.病気静養のために労務不能と認められる期間は支給する。(昭和32年8月13日保文発第6905号)
7.被保険者資格取得前にかかった疾病または負傷の資格取得後の療養についても、傷病手当金、療養の給付は支給される。(昭和26年5月1日保文発第1346号)
8.負傷のため廃疾となり、その負傷につき療養の必要がなくなったときには、労務不能であっても療養のための労務不能ではないので支給しない。(昭和3年10月11日保理第3480号)
9.療養の給付をなさないこととした疾病等(たとえば美容整形手術)について被保険者が自費で手術を施し、そのため労務不能となった場合には、これに対し傷病手当金は支給すべきでない。(昭和4年6月29日保理第1704号)

(B)誤り
法108条2項、則89条1項
傷病手当金の支給事由となっている疾病や負傷に関して障害厚生年金等が受給できる場合は、原則として傷病手当金は支給されない。ただし、障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)を360で除して得た額(その額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた額)が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給されることになっている。
よって、「傷病手当金が優先して支給される」とした問題文は誤りとなる。

(C)正解
法135条、平成15年2月25日保発0225001号・庁保発1号
日雇特例被保険者に対する傷病手当金の支給に当たっては、労務不能となった際にその原因となった傷病について療養の給付を受けていることで足り、労務不能期間のすべてにおいて当該傷病につき療養の給付を受けていることを要しないこととされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、従来は、労務不能となった原因の傷病について現に療養の給付を受けていることが傷病手当金の受給要件とされていた(昭和33年5月28日保発35号)。しかしながら、この取扱いには、療養の給付を開始してから労務不能となるまでの期間が長いほど傷病手当金の支給期間が短くなってしまうという問題点があり、また、平成15年4月に療養の給付の5年間の受給期間が廃止され、受給期間が1年間に統一されたため、傷病手当金の受給期間が残っていたとしても、5年間の受給期間が途切れることにより、傷病手当金の支給が停止する事例が生じることが想定されたため取扱いを変更したものである。

(D)正解
法99条1項、平成11年3月31日保険発46号・庁保険発9号
傷病手当金及び出産手当金の支給要件に該当すると認められる者については、その者が介護休業期間中であっても傷病手当金又は出産手当金が支給される。しかし、健康保険法の規定による傷病手当金又は出産手当金が支給される場合であって、同一期間内に事業主から介護休業手当等で報酬と認められるものが支給されているときは、傷病手当金又は出産手当金の支給額について調整を図ることとされている。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法97条、則82条
移送費の支給を受けようとする者は、所定の事項を記載した申請書に次の事項を記載した医師又は歯科医師の意見書及び移送に要した費用の額を証する書類を添付して保険者に提出しなければならないことになっている。
(1)移送を必要と認めた理由(付添いがあったときは、併せてその付添いを必要と認めた理由)
(2)移送経路、移送方法及び移送年月日
よって、問題文は正解となる。
なお、意見書には、これを証する医師又は歯科医師において診断年月日を記載し、記名及び押印をしなければならないことになっている。

  

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