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トップページ過去問研究室(雇用保険法) 平成14年雇用-第1問(雇用保険制度)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成14年雇用-第1問(雇用保険制度)

雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)雇用保険では、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行う失業等給付のほか、失業の有無を問わず労働者の自発的な教育訓練の受講を支援する教育訓練給付と、雇用安定、能力開発、雇用福祉のいわゆる三事業を行っている。

(B)雇用保険は政府が一元的に管掌する制度であり、都道府県知事にその事務の一部を行わせることは許されていない。

(C)雇用保険の費用は原則として事業主及び被保険者(三事業については事業主のみ)が支払う保険料のみによって賄われるが、失業等給付の保険給付額が労働保険特別会計の雇用勘定の積立金額を超えた場合には、求職者給付及び雇用継続給付に要する費用の一部を国庫が負担する。

(D)雇用保険の料率については、失業予防の観点から、一定規模以上の事業に関していわゆるメリット制が取られており、当該事業における 過去3年間の保険料の額と離職者に対する求職者給付の支給額の割合が一定の基準を超え又は一定の基準を下回る場合、事業主が負担する部分の雇用保険率を一定範囲内で引き上げ又は引き下げるものとされている。

(E)雇用保険法には罰則があり、被保険者や受給資格者についても一定の違反行為があれば6か月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処するものとされている。



■解説

(A)誤り
法1条、法3条、法10条
雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とし、この目的を達成するために失業等給付を行うほか、雇用保険三事業を行うことになっている。
そして、失業等給付として、「求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付」があり、雇用保険三事業として、「雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業」がある。
よって、教育訓練給付は「失業等給付」に含まれているため、「失業等給付以外に教育訓練給付が行われる」とした問題文は誤りである。

(B)誤り
法2条、令1条
雇用保険は、政府が管掌するが、雇用保険の事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができるとされている。
よって、「都道府県知事にその事務の一部を行わせることは許されていない」とした問題文は誤りである。
なお、具体的に都道府県知事が行う事務は、「能力開発事業」のうち一定の事業(職業能力開発促進法に基づく一定の職業訓練を行う事業主に対する助成事業等)に関する事務を行うこととされている。

(C)誤り
法66条、法67条、法68条
雇用保険事業は被保険者及び事業主(雇用保険三事業については事業主のみが負担)の保険料で賄われるが、安定した事業運営のために国庫負担が行われることになっている。
よって、失業等給付の保険給付額が労働保険特別会計の雇用勘定の積立金額を超えた場合に限られず、国庫負担は行われるので問題文は誤りとなる。
また、高年齢求職者給付金(求職者給付)に対しては、国庫負担が行われないので、その点からも誤りの肢となる。

(参考)
国庫負担の内容と負担割合
1.日雇労働求職者給付金以外の求職者給付(高年齢求職者給付金は除く)に係る費用の4分の1
※会計年度ごとに支給した求職者給付(高年齢求職者給付金は除く)の総額が一定額以上である場合(赤字になった場合)には、その額に応じて、支給した求職者給付(高年齢求職者給付金は除く)の総額の3分の1に相当する額まで国庫負担が行われる。
2.日雇労働求職者給付金に係る費用の3分の1
※会計年度ごとに徴収した日雇労働被保険者に係る保険料額が一定額以上である場合(黒字になった場合)には、その額に応じて、支給した日雇労働求職者給付金の総額の4分の1に相当する額まで、国庫負担割合が引き下げられる。
3.雇用継続給付に係る費用の8分の1
4.広域延長給付が行われる場合には、広域延長給付の適用を受ける者の求職者給付に係る費用の3分の1
5.その他予算の範囲内で、雇用保険事業の事務の執行に要する経費を負担する。

(D)誤り
徴収法12条3項
労災保険においては、保険料負担の公平化と事業主の自主的な労働災害防止努力を促進するために、労働保険に係る保険関係が成立してから3年以上経過している事業については、メリット制(収支率のよい事業の保険料を優遇し、収支率の悪い事業の保険料を増額する制度)が適用されることになっているが、雇用保険では、メリット制は導入されていない。
よって、「雇用保険の料率については、失業予防の観点から、一定規模以上の事業に関していわゆるメリット制が取られており」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
法85条
被保険者、受給資格者等、教育訓練給付対象者又は未支給の失業等給付の支給を請求する者その他の関係者が次のいずれかに該当するときは、6箇月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることになっている。
1.偽りその他不正の行為によって日雇労働被保険者手帳の交付を受けた場合
2.行政庁の命令命令に違反して報告をせず、若しくは偽りの報告をし、文書を提出せず、若しくは偽りの記載をした文書を提出し、又は出頭しなかった場合
3.行政庁の立入検査に際して、当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは偽りの陳述をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合

  

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