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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■要件

1.一部負担金の支払義務
第63条第3項の規定により保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際一部負担金を当該保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならない。(法第74条第1項)

2.一部負担金の保険者徴収
保険医療機関又は保険薬局は、上記1の一部負担金の支払を受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお療養の給付を受けた者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該保険医療機関又は保険薬局の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。 (法第74条第2項)

■「法第63条第3項の規定による」とは?

法第63条第3項の規定とは、被保険者が「療養の給付」を受ける場合の規定であり、よって入院時食事療養費(法第85条)、特定療養費(法第86条)、療養費(法第87条)にかかる自己負担分や被扶養者について支給される家族療養費(法第100条)にかかる自己負担分は、法第74条の一部負担金とは無関係である。

■一部負担金の支払い

一部負担金は療養の給付を受けた者が保険医療機関等に支払い、保険医療機関等は法第76条第1項の規定により、療養に要する費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額を保険者に請求する。

なお、「一部負担金不払と保険医療機関ないし保険医の診療応需義務との関係は、医師法又は歯科医師法における応招義務の規定により処理されるものであって、健康保険法により特別の扱いをするものでないこと。(昭和32年5月15日保発第42号)」

■一部負担金の額

「療養の給付」について、法第76条第2項の規定に基づく「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」によって算定された額、又は法第76条第3項の規定に基づく保険医療機関等と保険者との間に割引契約が締結されている場合には、当該契約により算定された額に次の割合を乗じて得た額

(1)原則
100分の30

(2)70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合(下記(3)の場合は除く)
100分の10

(参考)
「70歳に達する日」とは70歳の誕生日の前日であるため、月の初日に生まれた者以外は70歳の誕生月の翌月から一部負担金の額が100分の10になる。
ちなみに月の初日生まれの者は誕生月から一部負担金の額が100分の10になる。

(3)70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合であって、政令で定めるところにより算定した報酬の額が政令で定める額以上である場合
100分の20

(参考)
1.政令で定めるところにより算定した報酬の額が政令で定める額以上とは?
政令で定めるところにより算定した報酬の額は療養の給付を受ける月の標準報酬月額とし、同号 の政令で定める額は28万円とする。
ただし、被保険者及びその被扶養者(70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合に該当する者又は老人保健法の規定による医療を受けることができる者に限る。)について厚生労働省令で定めるところにより算定した収入の額が621万円(被扶養者がいない者にあっては、484万円)に満たない者については、適用しない。 (施行令第34条)

2.上記1の厚生労働省令とは?
施行令第34条第2項に規定する収入の額は、厚生労働大臣の定めるところにより、同項に規定する者の療養の給付を受ける日の属する年の前年(当該療養の給付を受ける日の属する月が1月から8月までの場合にあっては、前々年)における所得税法第36条第1項に規定する各種所得の金額(退職所得の金額(同法第30条第2項に規定する退職所得の金額をいう。)を除く。)の計算上収入金額とすべき金額及び総収入金額に算入すべき金額を合算した額とする。(規則第55条)

※一部負担金を過誤払いした時の取扱い
実際の一部負担金の支払いは、保険医療機関等の窓口において行われるために、療養の給付について保険医療機関等が算定した額を基礎として一部負担金の額が算定される。
保険者又は社会保険診療報酬支払基金の審査後の額が保険医療機関等が算定した額と一致する場合には、一部負担金の真正な額と実際に被保険者が窓口で支払った額に相違はなく、問題は生じない。
しかし、保険者又は社会保険診療報酬支払基金によって、保険医療機関等が算定した額の減額(又は増額)査定が行われ、かつ、その査定について保険医療機関等に特段の異論がない場合には、被保険者が窓口で実際に支払った一部負担金の額について過払い(又は未払い)が生ずることになる。
このような過払いの場合には、保険医療機関等について不当利得が、未払いの場合には、被保険者に不当利得が発生していることになり、この場合は民法第703条又は第704条の規定に基づき、保険医療機関又は被保険者に民法上の不当利得返還請求権が生じることになる。

■一部負担金の保険者徴収について

1.要旨
保険者が保険医療機関等の請求により、徴収金の例によって未払一部負担金を処分した上、これを保険医療機関等に交付することとし、保険医療機関等に強制徴収権限がないために起こる損失を強制徴収権限を行使し得る保険者が代わって徴収しようという趣旨である。
したがって、一部負担金の徴収義務は、第一義的には保険医療機関等にあると考えることができる。

2.未払一部負担金の保険者徴収に関する事項
(1)保険医療機関から保険者に対し、未払一部負担金の処分を請求があった場合、保険者は保険医療機関が善良な管理者と同一の注意をもって一部負担金の支払いを求めたことを確認のうえ当該請求を受理するものであること。
この場合において、善良な管理者と同一の注意とは、保険医療機関の開設者という地位にある者に対し、一般的に要求される相当程度の注意をいうものであり、その確認は、例えば、内容証明付郵便により支払請求を行つた等の客観的事実に基づき行うこと。

(2)保険医療機関からこの処分の請求を受ける場合には、次の事項を記載した請求書を提出させること。また、その請求書には保険医療機関が善良な管理者と同一の注意をもって一部負担金の支払いを受けるよう努めた事実を示す書類を添付させること。
1.保険医療機関の名称及び所在地並びに開設者の氏名
2.被保険者の氏名及び住所並びに被保険者証の記号番号
3.当該請求の原因たる一部負担金に係る療養の給付が行われた年月日及び収容がある場合は、その期間並びに当該一部負担金の額及びその内訳

(3)保険医療機関からの請求に基づき行う納入告知、督促、滞納処分は徴収金の例によるものであり、収納された現金は歳入歳出外現金として取り扱うこととし、収納された金額を当該保険医療機関に交付するのであること。
(昭和56年2月25日保険発第10号・庁保険発第2号)

■一部負担金の端数調整

一部負担金の額に5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げる。(法第75条)

  

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