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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■被保険者が日雇労働者又はその被扶養者となった場合(特別療養給付)

1.制度趣旨
日雇特例被保険者が保険給付を受けるためには、初めて療養の給付等を受ける日の属する月の前2月間に通算して26日以上又は、前6月間に78日以上保険料を納付するという受給要件を満たす必要がある。

そのために、被保険者が資格喪失し日雇特例被保険者となった場合に、その被保険者資格を喪失した際に療養の給付等をうけていた者は治療中であるにもかかわらず、保険給付が打ち切られ、日雇特例被保険者としても給付が受けられないという問題が生じる。

よって、被保険者が資格喪失し日雇特例被保険者となった場合には、資格喪失の際に現に療養を受けていたものについて、保険料を納めることなしに、従来の保険者から引き続き、療養の給付等を受給できるように制度が設けられた。

2.受給要件(法第98条第1項)
被保険者が資格を喪失し、かつ日雇特例被保険者又はその被扶養者となった場合に、その資格喪失の際、次の給付をうけていること

(1)療養の給付、入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費
(2)老人保健法の規定による医療等(上記1に相当する部分)
(3)介護保険法の規定によるサービス(上記1に相当する部分)

(参考)
1.資格喪失した際とは、例えば、11日に解雇されたものは12日の午前0時が資格を喪失したときとなる。(昭和7年5月31日保規第194号)

2.被保険者の資格喪失には任意適用の取消しの場合も含まれる。(昭和27年10月3日保文発第5381号)

3.「資格を喪失した際に療養の給付……を受けている」及び「療養の給付……を受けることができる」の解釈運用については、被保険者であった際、疾病又は負傷(以下「疾病等」という。)に関し、療養の給付等を受けており、被保険者資格喪失当時又は資格喪失後において当該疾病等に関し一時的に具体的な医療行為を現実に受けていなかったとしても、そのことを理由に直ちに同条にいう「療養の給付……を受けている」に該当しないものとすることなく、当該疾病等の性質、その治癒に必要な療養の性質及び内容、具体的な医療行為を受けていない理由等に照らし、依然として療養を継続する必要性があり、全体としてみれば療養の状態が継続していると認められる限りは、なお、療養の給付等を受けているものと解する取り扱いとするものであること。
このように療養の状態が継続するかどうかの判断に当たっては、当該疾病等の性質、その治癒に必要な療養の性質及び内容、具体的な医療行為を受けていない理由等が重要な判断の要素となる。(平成15年2月25日保保発第0225007号・庁保険発第4号)

3.継続して受けることができる療養(法第98条第1項)
特別療養給付の受給要件を満たした者は、資格喪失の際に現に給付を受けていた保険者から次の給付をうけることができる。

(1)療養の給付
(2)入院時食事療養費
(3)特定療養費
(4)療養費
(5)訪問看護療養費
(6)移送費

4.受給終了事由(法第98条第2項)
次のいずれかの事由に該当するに至ったときは行なわない。

(1)日雇特例被保険者として、療養の給付、入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費の支給を受けることができるに至ったとき
(2)老人保健法の規定による医療等を受けることができるに至ったとき
(3)被保険者若しくは船員保険に被保険者若しくはこれらの者の被扶養者又は国民健康保険の被保険者となったとき
(4)被保険者の資格を喪失した日から起算して6月を経過したとき

5.受給が行なわれない期間
次の事由に該当する間は受給を行なわない。

(1)日雇特例被保険者に対する特別療養費、移送費若しくは家族移送費の支給を受けることができる間(法第98条第3項)
(2)老人保健法の規定による医療等が行なわれる間(法第98条第3項)
(3)介護保険法の規定によりそれぞれの給付に相当する給付を受けることができる場合(法第98条第4項)

■傷病手当金又は出産手当金の継続給付

1.受給要件(法第104条)
(1)被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く)であったこと。

(2)資格喪失の際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているもの(現に給付を受けているものだけでなく受給権者も含む)であること。

(参考)
1.「引き続き」とは、必ずしも同一保険者でなくてもよく、また資格の得喪があっても法律上の被保険者としての資格が連続していればよい。

2.現にこれ等の保険給付を受けている者は勿論その受給権者であって、法第108条(傷病手当金又は出産手当金と報酬等との調整)の規定により一時給付の停止をされている者も含む。
なぜなら、法第108条において傷病手当金又は出産手当金を支給しないと規定しているのは、被保険者の給付受給権の消滅を意味するのではなく、その停止を意味するにすぎないから、その者が資格を喪失し、事業主より報酬を受けられなくなれば、法第104条により当然にその日より傷病手当金又は出産手当金は支給すべきものと思料される。(昭和27年6月12日保文発第3367号)

3.退職時疾病にかかっていても、会社に出勤して労務に服していれば、資格喪失後の傷病手当金の受給はできない。(昭和31年2月29日保文発第1590号)

2.受給期間(法第104条)
次の期間、継続して同一の保険者から給付をうけることができる。
(1)傷病手当金 支給開始日から起算して1年6月まで
(2)出産手当金 出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日まで

(参考)
1.「継続して」とは?
(1)資格喪失後継続して傷病手当金の支給を受けてる者については、保険診療を受けていても、一旦稼動して傷病手当金が不支給になった場合には、完全治癒であると否とを問わず、その後更に労務不能となっても傷病手当金の支給は復活されない。(昭和26年5月1日保文発第1346号)

(2)昭和28年11月1日に資格を喪失した被保険者について、同年6月30日から10月31日まで結核による傷病手当金が支給されていた。
継続給付受給要件を満たしていた者であったので、喪失の日の11月1日から翌29年12月29日までの傷病手当金を昭和31年10月16日に請求してきた。
しかし、昭和28年11月1日から翌29年10月15日までの分は時効により支給できない。
このような場合には、法第104条の「継続して」に該当しないので時効未完成の期間についても継続給付は受けられない。(昭和31年12月24日保文発第11283号)

2.「同一の保険者からその給付を受けることができる」とは?
(1)継続して受けることのできる給付は被保険者の資格喪失の際受くる給付のみに限る。資格喪失の際療養の給付のみを受けていた者は、喪失後療養の給付を受け得る期間内に労務不能となっても傷病手当金は支給されぬ。(昭和2年4月7日保理第1423号)

(2)資格喪失の際自費で療養をなし、これがために労務不能の故をもって傷病手当金を支給されていた者は、傷病手当金の継続給付は受けられるが療養の給付の継続給付はない。

3.出産手当金について
資格喪失後6月以内に分娩したときは、法第104条ではなく、法第106条(資格喪失後の出産に関する給付)の規定による。

■資格喪失後の死亡に関する給付

1.受給要件(法第105条)
次のいずれかの要件に該当した場合は、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行なう者は、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。(第1項)

(1)法104条(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)の保険給付を受ける者が死亡した場合
(2)上記1の保険給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後3月以内に死亡した場合
(3)被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後3月以内に死亡した場合

なお、埋葬料の支給を受けるべき者がない場合は、「埋葬に要した費用」が支給される。(第2項)

(参考)
1.傷病手当金又は出産手当金の継続給付のような「資格喪失の日の前日まで継続して1年以上被保険者期間が必要」といった受給要件はない。

2.「資格を喪失した日後3月以内」という期間は資格喪失の日より起算する。

2.支給額
法第100条(埋葬料)の規定と同額
※「埋葬に要した費用」も同様

(参考)
埋葬料の場合と同じく、死亡に原因は問われない。
※継続給付をうけていた傷病が死亡原因になっている必要はない。

■資格喪失後の出産に関する給付

1.受給要件(法第106条)
(1)被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く)であったこと。

(2)被保険者の資格を喪失した日後6月以内に出産したこと。

(参考)
1.「引き続き1年以上被保険者」とは?
必ずしも同一保険者でなくてもよく、また資格の得喪があっても法律上の被保険者としての資格が連続していればよい。

2.資格を喪失した日後6月以内に出産とは?
(1)資格喪失後受胎したことがあきらかな場合でも資格喪失後6月以内に分娩したときは分娩に関する保険給付を行なう。(昭和8年4月25日保規第142号)

(2)分娩の予定日と分娩日とが相違したときは、分娩日をもって支給期間が調整されるので、予定日が6ヵ月以内であったが喪失後6ヵ月を経過して分娩すれば、すでに分娩前に支給を受けていた出産手当金は返還することになる。(昭和31年7月16日保文発第5265号)

(3)資格を喪失した日(任意継続被保険者にあってはその資格を喪失した日)後6月以内という期間は、資格喪失した日より起算する。

3.家族出産育児一時金との併給禁止について
(1)夫が国家公務員共済組合員、妻が健康保険の被保険者であって、妻妊娠のため資格喪失、夫の被扶養者となり、資格喪失後約6ヵ月以内に分娩したとき、健康保険の出産育児一時金と共済組合の家族出産育児一時金と併給されない。(昭和26年7月20日保文発第2423号)

(2)被保険者本人としての出産育児一時金を受給するか、被扶養者としての家族出産育児一時金を受給するかは請求者の選択にまかせる。(昭和48年11月保険発第99号・庁保険発第21号)

2.受給できる保険給付
上記1の受給要件を満たした場合は、出産につき被保険者として受けることができるはずであった保険給付を最後の保険者から受けることができる。

(参考)
保険給付について
(1)出産育児一時金及び出産手当金をいう。出産手当金について、喪失後の労務に服していないか否かの認定については、その者が定職について働いた事実のない限り、労務に服しておらないものとし、炊事、洗濯その他家事に従事するときも支給される。(昭和24年6月14日保文発第1087号)(昭和31年7月16日保文発第5265号)

(2)出産手当金は、労務に服することが可能か否かにかかわらず、現に労務に服さなかったことを要件とするものであるから、法第106条の規定により、資格喪失後において支給される出産手当金については、当該被保険者が失業保険を受給中であるか否かにかかわらず、他の事業所において使用されていない限り当然支給すべきものである。(昭和31年3月13日保文発第1907号)

  

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