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トップページ > 社会保険労務士の勉強メモ > 傷病手当金又は出産手当金と報酬等との調整 | ||||||||
■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法) | ||||||||
給付事由が発生して、傷病手当金や出産手当金を受給できる状態にあっても、報酬を受けることができる間は、二重の報酬補償を行う必要がないために、原則として傷病手当金や出産手当金は支給されない。ただし、報酬額が傷病手当金や出産手当金の支給額を下回る場合は、その差額が支給される。 また、同様の理由から、傷病手当金の支給事由となっている疾病や負傷に関して障害厚生年金等が受給できる場合も原則として傷病手当金は支給されない。ただし、障害厚生年金等の額が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給される。 任意継続被保険者や傷病手当金の継続給付(法第104条)を受ける者に関して、老齢厚生年金等と傷病手当金が併給されている場合は、所得補償という制度の趣旨からの給付が重複しているので、原則として傷病手当金は支給されない。ただし、老齢厚生年金等の額が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給される。 ※一般被保険者については調整されないので注意すること。
1.「報酬の全部又は一部を受ける」とは? (1)傷病手当金の支給をうける期間は、事業主が常時における報酬の額から傷病手当金を控除した額を報酬として支給する旨を規定する場合は、その支給の実体は通常の生計費にあてられる労務報酬の一部として支払われるものであると認めわれるので、法108条に該当する。(昭和2年2月1日保理第393号)(昭和28年5月18日保文発第2592号) (2)見舞金その他名称の如何を問わず、就業規則又は労働協約等に基き、健康保険法第3条にいう報酬支払の目的を以って支給されたと看做されるものであってその支払事由の発生以後引き続き支給されるものは法第108条の報酬に該当する。(昭和25年2月22日保文発第367号) (3)工場の就業規則で休業手当金を支給することを定めてあるときは、その手当金は、労働の対償と認められ報酬に入るので法第108条の適用がある。(大正15年11月16日保発第200号) (4)何等の成文もなく、ただ慣例として事業主の意思により私傷病の場合においても日給者又は月給者に対し金銭を給付し、名目を休業手当、休業扶助料、見舞金等と称しているものは単に病気見舞であり報酬と認められず第108条の適用はない。(昭和10年4月20日保規第123号) ※この場合でも、賃金台帳や源泉徴収簿に賃金として記載されていれば報酬に該当する場合がある。 (5)疾病等にかかり療養のため休業中であっても寄宿舎に居住させる利益で報酬の額の決定に影響のあるもの及び食事は継続して受けるものとすれば報酬の一部を受けるものと認められる。(大正15年12月22日保発第14号)(昭和3年7月21日庶発第811号)(昭和4年6月28日保発第324号) 2.「受けることができる報酬の額」とは? (1)給料から所得税を差し引いて、傷病手当金より小額となる場合でも、税込の支給額を、受けることができる報酬の額とする。(昭和24年12月26日保文発第2478号) ※内職等の収入は、報酬にならない。 3.「差額を支給」とは? 差額とは、傷病手当金又は出産手当金の額とこれが支給期間中における報酬額との差額とする。(昭和2年8月6日保理第3023号)
1.同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病とは? (1)同一の疾病又は負傷とは? 一回の疾病又は負傷で治癒するまでをいうが、治癒の認定は必ずしも医学的判断のみによらず、社会通念上治癒したものと認められ、症状をも認めずして相当期間就業後同一病名再発のときは、別個の疾病とみなす。 通常再発の際、前症の受給中止時の所見、その後の症状経過、就業状況等調査の上認定す。(昭和29年3月保文発第3027号)(昭和30年2月24日保文発第1731号) ※同一の疾病又は負傷には再発にかかるものは含まない。(昭和2年6月疑義事項解釈) (2)結核性疾患 結核性疾患については、症状が固定し、自覚的および他覚的にも病変や異常を認めず、医療を行なう必要がなくなった程度、すなわち、社会通念上、治癒したものと認めることができる状態にある場合を「治癒」として認定している。したがって、その後通常の勤務に服したにもかかわらず、一定期間経過後再び結核性疾患が発生したときは「再発」として取り扱って差し支えない。(昭和29年6月26日保文発第7334号) (3)保険給付を一旦終了したものとみなす場合 被保険者が目疾の自覚症状があり、保険医の診療を求めたところ診療の結果白内障と診断されたが未だ成熟していないので治療を施すべき時期に至らないと申し渡され、何等の治療も受けず、その後1、2年して甚だしく視力障害を来したので改めて診察をうけようとしたような場合には、保険給付は一旦終了したものとみなし後の給付については別に期間計算をする。(昭和6年12月26日保規第32号) (4)病名が異なる場合 医師の附した病名が異なる場合でも疾病そのものが同一なることが明らかなときは同一の疾病に該当する。(昭和4年8月30日保規第45号) (5)略治のまま勤務に服したとき 略治のまま勤務に服したときは、その後定期的に健康診断を受けその結果治癒と判断されて相当期間労務に服しその期間中の健康状態が良好であったことが認められれば、一旦治癒し再発と認められる。(昭和28年4月9日保文発第2013号) (6)再発とは? 被保険者が医師の診断により全治と認定されて療養を中止し、自覚的にも他覚的にも症状がなく勤務に服した後の健康状態も良好であったことが確認される場合は再発とみなす。(昭和26年12月21日保文発第5698号) (7)「てんかん」について 最後の発作後相当期間経過し、症状もなく、治療の要もなく、かつまた、労務に服することを得る状態にあったとき、その後の発作は再発として取り扱う。(昭和11年5月30日保規第124号) (8)これにより発した疾病とは? 同一系統のものであるか否かを問わずある傷病を原因として発した疾病をいうが、前傷病が一旦治癒した後これを原因として発した疾病を含まない。(昭和5年7月17日保規第351号) ※直接的、医学的因果関係があることが必要になる。よって第一疾病がなければ第二の疾病はおこり得なかったであろうという密接な因果関係が、その間に認められなければならない。例えば、胃酸過多症に起因する胃潰瘍等がある。 2.算定額について 障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)を360で除して得た額(その額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた額)とする。(規則第89条第1項) ※傷病手当金は日額で計算されるために、比較できるように障害厚生年金等の額を日額に直す場合の計算式について規定している。なお、年金額を日額に換算するにあたって「360で除する」ことにしたのは年金が月を単位に支給されることに着目し、1ヵ月の標準を30日として1年分に換算したためである。
1.傷病手当金の併給調整の対象となる者の要件(施行令第37条) 法第108条第4項の政令で定める要件は、法第135条第1項の規定により傷病手当金の支給を受けることができる日雇特例被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この章において同じ。)でないこととする。 ※任意継続被保険者や資格喪失後の継続給付の規定により傷病手当金の支給を受けている者は、日雇特例被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。)を兼ねている場合があり、その場合の傷病手当金は、任意継続被保険者又は資格喪失後の継続給付の規定によるものが優先する。(法第128条) このような場合に併給調整を行うと、法律上日雇特例被保険者については傷病手当金と老齢厚生年金等との併給調整を行わないこととしていることの均衡が取れないために、調整を行わないこととしたものである。 2.傷病手当金の併給調整の対象となる年金である給付 施行令第38条各号に定められている年金給付。 ただし、その全額につき支給を停止されている給付を除く。 3.算定額について 老齢退職年金給付の額(当該老齢退職年金給付が2以上あるときは、当該2以上の老齢退職年金給付の額の合算額)を360で除して得た額(その額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた額)とする。(規則第89条第2項)
法第108条に規定する報酬の全部又は一部を受けることができる者が、何らかの事情により、その受けることができるはずの報酬の全部又は一部を受けることができなかった場合、事業主から報酬の支払いもなく、傷病手当金又は出産手当金の支給もないので、被保険者の収入が途絶し、生活困難な状態に陥る。 そこで、このような場合の救済措置を規定し、事業主が報酬の全部又は一部を支給すべきにかかわらずその全額を支給しなかった場合は、報酬が全部無しとなるので、傷病手当金又は出産手当金の全額を支給する。 次に、事業主が報酬の全部又は一部を支給すべきところ、その一部(全部の一部、一部の一部)を支給したときは、その支給された一部の報酬が傷病手当金又は出産手当金の額より少ないときには、その受けた報酬と傷病手当金又は出産手当金の額との差額を支給する。 このようにして、傷病手当金又は出産手当金の額までは、保障することになる。 なお、この規定に基づき保険者が支給した保険給付は、立替払い的性質のものであるので、保険者は事業主から支給した額を当然に徴収する。 ※この徴収金は、法第180条に規定する「その他この法律による徴収金」に該当するので、督促を行ったうえで、国税滞納処分の例により徴収することができる。 |
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