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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■高額療養費とは?

療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養は除く)に要した費用の額からその療養に要した費用につき特定療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費として支給される額に相当する額を控除した額(自己負担額)が著しく高額であるときは、その療養の給付又はその特定療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給を受けた者に対し、高額療養費が支給される。(法第115条第1項)

(参考)
高額療養費の対象になる窓口負担には、一部負担金、特定療養費の自己負担額、療養費の自己負担額、家族療養費の自己負担額、訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)の基本利用料が含まれる。
ただし、特定療養費についての自己負担分の特別料金、入院時の食事療養についての標準負担額は対象外。

■高額療養費支給要件

同一の月に行われた療養の自己負担額(70歳未満の者については21,000円以上の自己負担額に限る。)を合算し、合算額から高額療養費算定基準額(自己負担限度額)を控除した額を高額療養費として支給する。(施行令第41条)

(解説)
1.同一の診療月(暦月)にかかるものにつき合算する。
2.被保険者とその被扶養者を単位として合算する。(夫婦が共に被保険者である場合等、同一世帯に複数の被保険者が存在するときはそれぞれを一世帯として扱う。)
3.70歳未満の場合には、自己負担額が21,000円以上のレセプトについて、自己負担額を合算する。(70歳以上の場合には、すべてのレセプトについて自己負担額を合算する。)

(参考)
1.高額療養費に関する事項
(1)高額療養費の支給に当たっての一部負担金等の合算は、被保険者及びその被扶養者を単位として行われるものであり、合算を行うことができる場合には、必ず合算したうえ支給するものとすること。

(2)高額療養費の支給の基礎となる一部負担金等の額は、従来どおり、診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を単位とするものであり、レセプト等の取扱いについては、従来と同様であること。
(昭和59年9月22日保険発第65号・庁保険発第17号)

2.レセプトの作成単位
(1)被保険者又は被扶養者ごと

(2)暦月ごと(例えば、3月5日から4月10日まで同一の病院で診療を受けた場合は、3月5日から3月31日までの療養にかかるものと、4月1日から4月10日までの療養にかかるものに区分される。)

(3)同一の病院、診療所、薬局その他の者ごと(例えば、同一月に2つの病院にかかった場合は、それぞれ別個に作成される。)
なお、同一の病院、診療所であっても、次の場合は、それぞれ別個に作成する。

1.医科診療と歯科診療(施行令第43条第8項)
2.同一月に歯科診療及び歯科診療以外の診療を併せ行う保険医療機関又は特定承認保険医療機関並びに二以上の診療科名を有する保険医療機関又は特定承認保険医療機関において通院により二以上の診療科にかかった場合(施行令第43条第8項)

※医療法の改正により、平成10年4月から総合病院制度が廃止されたが、当該改正前に総合病院の承認を受けている病院において、外来において二以上の診療科で診察が行われた場合には、引き続き各診療科ごとの別個にレセプトを作成するものとされた。

3.入院による診療と外来による診療(施行令第43条第9項)

■高額療養費の支給用件に関する具体的取扱

1.現金給付にかかる高額療養費の取扱い
療養費払いとなる家族療養費にかかる高額療養費については、看護料、移送費、生血代、治療用装具費にあってはそれぞれ同一病院、診療所ごと、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師における手当にあってはそれぞれ各同一施術所ごとに支給要件に該当するか否かを判定するものであること。

なお、非保険医療機関等で診療を受けた者に対して支給する療養費払いにかかる高額療養費については、現物給付にかかる高額療養費の例によって支給を行なうものであること。(昭和48年10月17日保険発第95号・庁保険発第18号)

2.同一月内で保険者が変更になった場合
同一月内で政管健保から組合、あるいは共済に移った場合の高額療養費は、レセプトがそれぞれの管掌者別に区分されるので、それぞれの管掌者毎に要件をみる。(昭和48年11月7日保険発第99号・庁保険発第21号)

3.月の途中で療養費払(現金)と家族療養費に分割されるようなケースの場合
高額療養費は、現物給付にかかるものについてはレセプト1件、現金給付にかかるものについては、これに準じて支給を行なう取扱いであるところから、月の途中で療養費払(現金)から家族療養費に変更されたような場合は、それぞれについて高額療養費の支給対象になるか否かを判断する取扱いとなる。(昭和48年11月7日保険発第99号・庁保険発第21号)

4.同一医療機関における治療用補装具等にかかる高額療養費
治療用補装具、付添看護等にかかる高額療養費は、同一医療機関における、それぞれの費用のみをもって支給対象となるか否かを判断するものであり、当該医療機関におけるレセプトと合算して、支給額を決定するものではない。(昭和48年11月7日保険発第99号・庁保険発第21号)

■高額療養費算定基準額(施行令第42条)

1.70歳未満
対象者区分 高額療養費算定基準額 多数該当
一般 72,300円+(総医療費−241,000円)×1% 40,200円
上位所得者 139,800円+(総医療費−466,000円)×1% 77,700円
低所得者 35,400円 24,600円

(参考)
1.上位所得者
療養のあった月の標準報酬月額が56万円以上の被保険者又はその被扶養者(施行令第42条第1項第2号)

2.低所得者
市町村民税非課税者である被保険者若しくはその被扶養者及び療養のあった月において生活保護の要保護者であって、低所得者特例による高額療養費の支給があれば生活保護の被保護者とならない者(施行令第42条第1項第3号)

2.70歳以上
対象者区分 高額療養費算定基準額 多数該当
個人単位(外来のみ) 世帯単位(入院を含)
一定以上所得者 40,200円 72,300円+(総医療費−361,500円)×1% 40,200円
一般 12,000円 40,200円
低所得者U 8,000円 24,600円
低所得者T 8,000円 15,000円

(参考)
1.低所得者U
市町村民税非課税者である被保険者若しくはその被扶養者又は療養のあった月において生活保護の要保護者であって、低所得者特例による高額療養費の支給があれば生活保護の被保護者とならない者(施行令第42条第2項第3号)

2.低所得者T
市町村民税非課税者で収入から必要経費等を差し引いた判定基準所得がない被保険者若しくはその被扶養者又は療養のあった月において生活保護の要保護者であって、低所得者Tの特例による高額療養費の支給があれば生活保護の被保護者とならない者(施行令第42条第2項第4号)

3.外来療養の場合は個人ごとに高額療養費算定基準額を適用
被保険者又はその被扶養者が外来療養を受けた場合において、当該被保険者又はその被扶養者が同一の月にそれぞれ一の病院等から受けた当該療養に係る額を当該被保険者又はその被扶養者ごとにそれぞれ合算した額が高額療養費算定基準額を超えるときは、当該それぞれ合算した額から高額療養費算定基準額を控除した額の合算額を高額療養費として支給する。(施行令第41条第3項)

4.入院時の高額療養費は現物給付
入院時の自己負担額が、同一月に一の保険医療機関等で世帯合算の高額療養費算定基準額を超えるときは、超えた分は高額療養費として現物給付される。よって高額療養費算定基準額を超える窓口負担はない。

また、入院療養以外の療養であって、一の保険医療機関等による総合的かつ計画的な医学的管理の下における療養(在宅末期医療総合診療科)が行われる場合は、外来の高額療養費算定基準額を超えた分は高額療養費として現物給付される。(施行令第43条第1項・第2項)

5.世帯での高額療養費
同一世帯の70歳以上の自己負担額は、入院を含む同一月のすべての自己負担額を合算して、所得区分ごとの高額療養費算定基準額を超えた分が高額療養費として支給される。
この場合の自己負担額等は70歳未満の場合のような合算対象基準額(21,000円)がなく、その額を問わずにすべての額を算定の基礎とする。
なお、外来療養に係る高額療養費は個人単位の高額療養費算定基準額を適用したあとになお残る自己負担額について適用し、入院の場合は上記4のように高額療養費が現物給付されたあとになお残る自己負担額について適用されることになる。

■多数回該当による負担軽減

1.70歳未満の者
(1)原則
当該療養のあった月以前の12月以内に既に高額療養費が支給されている月数が3月以上ある場合(以下「高額療養費多数回該当の場合」という。)にあっては、高額療養費算定基準額40,200円とする。(施行令第42条第1項第1号但し)

※月ごとに以前12月以内に高額療養費が支給された月が3回以上あるかどうか確認し、要件に該当していれば、その月は多数該当の高額療養費基準額の対象になる。

(2)上位所得者
高額療養費多数回該当の場合にあっては、77,700円とする。(施行令第42条第1項第2号但し)

※上位所得者
標準報酬月額56万円以上の被保険者又はその被扶養者

(3)低所得者
高額療養費多数回該当の場合にあっては、24,600円とする。(施行令第42条第1項第3号但し)

※低所得者
市町村民税非課税者である被保険者若しくはその被扶養者又は療養のあった月において生活保護の要保護者であって、低所得者特例による高額療養費の支給があれば生活保護の被保護者とならない者

2.70歳以上の者
(1)一定以上所得者
高額療養費多数回該当の場合にあっては、40,200円とする。(施行令第42条第2項第2号但し)

※一定以上所得者
標準報酬月額が28万円以上の被保険者とその被扶養者で70歳以上の者など、一部負担金(自己負担額)の支払いにあたって2割負担が適用される高齢受給者(施行規則第34条)

(2)その他の者
多数回該当による負担軽減はなし(施行令第42条第2項第1号)

※70歳以上の外来療養のみの高額療養費に該当した月は多数該当の回数算定には含めない。(施行令第42条第1項第1号但し)

■保険優先の公費負担医療が行われる場合

1.要件
被保険者又はその被扶養者が特定給付対象療養(高額長期疾病の特例を受けた場合における療養を除く。)を受けた場合において、当該被保険者又はその被扶養者が同一の月にそれぞれ一の病院等から受けた当該特定給付対象療養に係る一部負担金等の額が高額療養費算定基準額を超えるときは、当該一部負担金等の額から高額療養費算定基準額を控除した額を高額療養費として支給する。(施行令第41条第4項)

2.高額療養費算定基準額
(1)70歳未満の者
72,300円+(医療費総額−241,000円)×1%(施行令第42条第4項第1号)

(2)70歳以上の者
入院 40,200円(施行令第42条第4項第2号)
外来 12,000円(施行令第42条第4項第3号)

3.公費負担医療に該当するものの例
(施行令第41条第1項第2号及び施行規則第98条)
・原爆被爆者の一般疾病医療
・児童福祉法による育成医療、療育の給付
・身体障害者福祉法による更生医療
・精神保健福祉法による措置入院、通院医療
・結核予防法による適正医療、命令入所医療
・母子保健法による養育医療

4.高額療養費の支給
高額療養費は原則として現物給付の取扱いとなり、公費での費用徴収が行われる場合を除いて、窓口での負担は必要ない。(第43条第4項・第5項)

5.注意事項
(1)保険優先の公費負担医療に係る自己負担分については、世帯合算の対象から除外し、単独で上記(2)の高額療養費算定基準額を超える部分について高額療養費が支給される。(施行令第41条第1項及び第4項)
なお、この部分についてのみの高額療養費の支給があった月については、多数該当の月数にカウントしない。(施行令第42条第1項第1号但し)

(2)自己負担分に関し公費での費用徴収が行われる場合に、医療費総額に対する計算上の自己負担分(原則3割)が合算対象基準額(21,000円)以上である場合(70歳以上の者は合算対象基準額未満でも該当)については、公費での費用徴収額も世帯合算の対象になる。(施行令第41条第1項第2号、施行令第41条第2項第2号)

■高額長期疾病の特例

1.要件
被保険者又はその被扶養者が次のいずれにも該当する疾病として厚生労働大臣が定めるものに係る療養(食事療養を除く。)を受けた場合において、当該療養を受けた被保険者又はその被扶養者が厚生労働省令で定めるところ(施行規則第99条)により保険者の認定を受けたものであり、かつ、当該被保険者又はその被扶養者が同一の月にそれぞれ一の病院等から受けた当該療養に係る一部負担金等の額が高額療養費算定基準額を超えるときは、一部負担金等の額から高額療養費算定基準額を控除した額を高額療養費として支給する。

(1)費用が著しく高額な一定の治療として厚生労働大臣が定める治療を要すること。
(2)前号に規定する治療を著しく長期間にわたり継続しなければならないこと。
(施行令第41条第6項)

2.高額療養費算定基準額
高額療養費算定基準額は、10,000円とする。(施行令第42条第6項)

3.高額長期疾病の特例に該当する疾病
・人工腎臓を実施している慢性腎不全
・血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第[因子障害又は第\因子障害
・抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染を含み、血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症に関する医療を受けているものに限る)

4.高額療養費の支給
高額療養費は原則として現物給付の取扱いとなり、公費での費用徴収が行われる場合を除いて、窓口での負担は必要ない。(第43条第4項・第5項)

(参考)
1.慢性腎不全の場合
人工腎臓を実施している慢性腎不全の場合は、最大10,000円の自己負担分が公費(更生医療)の対象になる。

2.先天性血液凝固因子障害、後天性免疫不全症候群の場合
血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第[因子障害又は第\因子障害、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染を含み、血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症に関する医療を受けているものに限る)については、先天性血液凝固因子障害等治療研究事業の対象として、高額長期疾病の特例適用後の自己負担額10,000円全額が公費の対象になる。(よって窓口負担なし)

5.注意事項
(1)高額長期疾病の特例に係る自己負担分については、世帯合算の対象から除外し、単独で上記(2)の高額療養費算定基準額を超える部分について高額療養費が支給される。(施行令第41条第1項及び第6項)
なお、この部分についてのみの高額療養費の支給があった月については、多数該当の月数にカウントしない。(施行令第42条第1項第1号但し)

(2)自己負担分に関し公費での費用徴収が行われる場合に、医療費総額に対する計算上の自己負担分(原則3割)が合算対象基準額(21,000円)以上である場合(70歳以上の者は合算対象基準額未満でも該当)については、公費での費用徴収額も世帯合算の対象になる。(施行令第41条第1項第2号、施行令第41条第2項第2号)

■その他の事項

1.高額療養費の時効起算日は?
時効起算日は、診療月の翌月の1日であり、傷病が月の途中で治ゆした場合においても同様である。ただし、診療費の自己負担分を、診療月の翌月以後に支払ったときは、支払った日の翌日が起算日となる。(昭和48年11月7日保険発第99号・庁保険発第21号)

2.事後に照合したレセプトが減点されているとき
高額療養費を領収明細書に基づき支給した場合、事後に照合したレセプトが減点されているときは、その減点されたレセプトによりその額を決定することになるので、事後に減点分に対応する高額療養費額について返納措置を講ずるものとする。(昭和48年11月7日保険発第99号・庁保険発第21号)

3.高額療養費支給後の過誤調整した場合
高額療養費の支給は「レセプトの決定点数を基準とする」とのことであるが、被保険者に対してその決定点数によって支払った後、保険者において更に減点をしなくてはならぬ要因を発見し、過誤調整をした場合、過誤調整後の点数を基準として、さきの支給額を更正し、返納を命ずる必要が生ずる。(昭和48年11月7日保険発第99号・庁保険発第21号)

4.薬剤の支給を受けた場合
医療機関において薬剤の投与に代えて処方せんが交付された場合は、当該処方せんに基づく薬局での薬剤の支給は、処方せんを交付した医療機関における療養の一環とみなして取扱うよう配慮されたいこと。この場合、その薬剤の支給を行なった薬局において領収書が発行されているときは、それに基づき支給してさしつかえないこと。(昭和48年10月17日保険発第95号・庁保険発第18号)

  

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