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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法)




■日雇特例被保険者に係る保険給付との調整

1.要旨
被保険者に係る家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費、家族埋葬料又は家族出産育児一時金の支給は、同一の疾病、負傷、死亡又は出産について、「日雇特例被保険者に関する特例」の規定により療養の給付又は入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、埋葬料若しくは出産育児一時金の支給を受けたときは、その限度において、行わない。 (法第54条)

2.解説
日雇特例被保険者であった者が健康保険の被扶養者になった場合に、日雇特例被保険者としての保険給付の受給要件を満たしているときは、健康保険の被扶養者としての給付と日雇特例被保険者としての保険給付を両方受けることができるようになるので、このように同一事由の給付が競合する場合には、併給を認めるのでなく、調整を行う旨の規定である。

※同一の事由に基づく保険事故について、一般被保険者及びその被扶養者としての給付と日雇特例被保険者及びその被扶養者としての給付が重複する場合は、一般被保険者及びその被扶養者としての保険給付が優先する。(法第128条)

■労災保険法等の給付を受給できる場合

1.要旨
被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金若しくは埋葬料の支給は、同一の疾病、負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法若しくは同法に基づく条例の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。 (法第55条第1項)

2.「これらに相当する給付」とは?
労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法における通勤災害給付を受けた場合が考えられる。

3.「受けることができる場合」とは?
現に通勤災害給付を受けた場合という意味ではなく、通勤災害給付の受給権を有するという意味である。

4.その他
労災保険未適用事業所に使用される健康保険の被保険者が通勤災害で負傷した場合は、健康保険から保険給付を受けることができる。

■介護保険法の給付を受給できる場合

1.要旨
被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給は、同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。 (法第55条第2項)

2.解説
同一の疾病等により、健康保険法の療養の給付等に相当する給付を介護保険法の規定により受けることができるとき、または受けたときは、健康保険から重ねて給付を行う必要はないので、介護保険法に基づく給付が優先されることを規定している。

3.死亡に関する保険給付
死亡に関する保険給付については、健康保険から行われる。

※上記、労災保険法等の給付を受給できる場合との違いに注意

■他の法令との調整

1.要旨
被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、特定療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、家族療養費、家族訪問看護療養費若しくは家族移送費の支給は、同一の疾病又は負傷について、他の法令の規定により国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給を受けたときは、その限度において、行わない。(法第55条第3項)

2.「他の法令」に該当するのは?
該当する主な法令は次のようなものがある。

(1)災害救助法
非常災害の場合に、災害救助法が発動されたとき、都道府県知事が救助を行うが、その救助の中には医療及び助産が含まれている。
よって、被保険者等が非常災害に被災し、医療を必要とする場合において、救助としての医療が行われれば、その限度において健康保険の給付は行われない。

(2)公害健康被害補償法
公害健康被害補償法では、公害による疾病であると認定を受けた場合は、療養の給付、障害補償費等の補償給付を行うことになっている。
よって、公害健康被害補償法による補償給付が支給された場合は、同一の事由に基づく健康保険等の給付は行われない。

(3)戦傷病者特別援護法
戦傷病者に対しては、戦傷病者特別援護法により戦時中の公務による傷病について全額国費で医療が受けられる。
よって戦傷病については公費が健康保険に優先する。

(4)原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
原爆の被爆者には、被爆者健康手帳が交付され、厚生労働大臣が認定した原爆症にかかった場合は全額国費で医療が受けられる。
よって、原爆症については公費が健康保険に優先する。

3.公費負担医療と健康保険の関係(参考)
公衆衛生的な立場から予防と治療を行う必要のある病気については、法律によって公費で治療予防が行われている。
これらの公費負担医療と健康保険の給付については次のように調整が行われている。

(1)結核予防法
一般患者に対する医療(適正医療)と命令入所患者に対する医療について都道府県が負担する。

1.一般患者に対する医療
一般の結核患者に対して行われた医療の費用については、都道府県がその100分の95を負担できる。
ただし、健康保険等から医療に関する給付を受けることができる場合は、その限度までは公費負担は行わない。(健康保険優先の給付)

※一般被保険者の場合は、結核治療に係る医療の費用のうち、100分の70が健康保険、100分の25が公費負担、残りの100分の5が患者負担となる。

2.命令入所患者に対する医療
都道府県知事による就業禁止や結核療養所への入所命令があった場合は、その入院費は全額公費負担になる。
ただし、健康保険等から医療に関する給付を受けることができる場合は、その限度までは公費負担は行わない。(健康保険優先の給付)

なお、この場合においても患者又はその扶養義務者の負担能力によっては自己負担を求められる場合がある。(健康保険の自己負担相当額を超えることはない)

(2)精神保健福祉法
精神障害者の通院医療と入院措置をとった場合の精神障害者の医療について都道府県が負担する。

1.通院医療
精神障害者が通院して精神障害の医療を受けた場合の費用については、都道府県がその100分の95を負担できる。
ただし、健康保険等から医療に関する給付を受けることができる場合は、その限度までは公費負担は行わない。(健康保険優先の給付)

※一般被保険者の場合は、通院での精神障害に係る医療の費用のうち、100分の70が健康保険、100分の25が公費負担、残りの100分の5が患者負担となる。

2.措置入院
都道府県知事が、医療や保護のために精神障害者を強制入院させた場合は、その入院費は全額公費負担になる。
ただし、健康保険等から医療に関する給付を受けることができる場合は、その限度までは公費負担は行わない。(健康保険優先の給付)

なお、この場合においても患者又はその扶養義務者の負担能力によっては自己負担を求められる場合がある。(健康保険の自己負担相当額を超えることはない)

(3)感染症予防医療法
感染症予防医療法の入院勧告等による一類感染症(ペストやエボラ出血熱など)及び二類感染症(腸チフスやコレラなど)患者の医療費について健康保険で給付した残りの自己負担相当額が公費負担の対象になる。(健康保険優先の給付)

なお、患者やその扶養義務者に費用負担能力がある場合は、その限度で公費負担は行われない。

(4)生活保護法による医療扶助
健康保険からの給付が優先し、自己負担相当額が医療扶助の対象になる。
※高額療養費は現物給付されることになるので、窓口負担はない。

(5)母子保健法による養育医療
健康保険からの給付が優先し、自己負担相当額について都道府県が負担する。
ただし、患者やその扶養義務者に費用負担能力がある場合は、その限度で公費負担は行われない。

※高額療養費は現物給付されることになるので、費用徴収が行われる場合を除き窓口負担はない。

(6)児童福祉法による育成医療
健康保険からの給付が優先し、自己負担相当額について都道府県が負担する。
ただし、患者やその扶養義務者に費用負担能力がある場合は、その限度で公費負担は行われない。

※高額療養費は現物給付されることになるので、費用徴収が行われる場合を除き窓口負担はない。

(7)身体障害者福祉法による更生医療
健康保険からの給付が優先し、自己負担相当額について都道府県が負担する。
ただし、患者やその扶養義務者に費用負担能力がある場合は、その限度で公費負担は行われない。

※高額療養費は現物給付されることになるので、費用徴収が行われる場合を除き窓口負担はない。
  

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