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■社会保険労務士の勉強メモ(健康保険法) | ||||||||
■要旨 1.被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。(法第189条第1項) 2.審査請求をした日から60日以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。(法第189条第2項) 3.上記1の審査請求及び上記2の再審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。(法第189条第3項) 4.被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは、その処分についての不服を当該処分に基づく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることができない。(法第189条第4項) ■「被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分」とは? 1.被保険者の資格に関する処分 事業主からの届出に基づく確認、被保険者からの請求に基づく確認、職権による確認、確認請求の却下など 2.標準報酬に関する処分 標準報酬月額の決定及び改定と標準賞与額の決定 3.保険給付に関する処分 誤った請求に対する不支給決定、療養の給付の決定、療養費や傷病手当金等の現金給付の支給決定など ■「不服がある者」とは? 1.概略 審査請求の対象たる処分によって直接に権利を害された者で、被保険者のみに限られない。なお、保険者は含まれない。 2.被保険者の資格に関する処分の場合 被保険者であった者も含む 3.標準報酬に関する処分の場合 事業主も含む 4.保険給付に関する処分の場合 被保険者、被保険者であった者、埋葬料又は埋葬に要した費用に相当する金額の受給権者、被保険者の受給権を承継した遺族等も含む 5.代理人による不服申立 処分に不服のある者の代理人も行うことができるが、代理委任状を添付又は提出する必要がある。 ■社会保険審査官 1.各地方社会保険事務局に設置される独任性の第一次審査機関である。社会保険審査官は、厚生労働省の職員のうちから厚生労働大臣が任命する。(審査会法第1条及び第2条) 2.社会保険審査官は、保険者の給付に決定についてその決定方式の適法性を検討するものではない。現実になされた給付の決定が事件の事実に適合して決定され受給権者の保険法令によって受けられるべき権利を満足させているか否かを審査する。 給付の決定手続等について過誤なく適法にされていたとしても、審査の結果、受給権者が受けられるべき権利が事実に照らして満足されていなければ、決定を変更乃至廃棄させるべきである。(昭和23年11月24日保発第139号) ■審査請求に関する事項 1.管轄審査官 (1)地方社会保険事務局長又は社会保険事務所長がした処分に対する審査請求にあっては、その地方社会保険事務局又はその社会保険事務所を管轄する地方社会保険事務局に置かれた審査官(審査会法第3条第1項第1号) (2)健康保険組合がした処分に対する審査請求にあっては、その処分に関する事務を処理した健康保険組合等の事務所の所在地を管轄する地方社会保険事務局に置かれた審査官(審査会法第3条第1項第2号) 2.審査請求の期間 (1)原則として、その処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。但し、正当な事由によりこの期間内に審査請求をすることができなかったことを疎明したときは、この限りでない。(審査会法第4条第1項)
(2)被保険者の資格、標準報酬に関する処分に対する審査請求は、原処分があった日の翌日から起算して2年を経過したときは、することができない。(審査会法第4条第2項) (3)審査請求書を郵便又は信書便で提出した場合における審査請求期間の計算については、送付に要した日数は、算入しない。(審査会法第4条第3項) ※発信主義を採用している。 3.審査請求の方式 (1)審査請求は、文書又は口頭ですることができる。(審査会法第5条第1項) (2)審査請求は、原処分に関する事務を処理した地方社会保険事務局、社会保険事務所若しくは健康保険組合等又は審査請求人の居住地を管轄する地方社会保険事務局、社会保険事務所若しくは当該地方社会保険事務局に置かれた審査官を経由してすることができる。(審査会法第5条第2項) (3)審査請求が管轄違であるときは、審査官は、事件を管轄審査官に移送し、且つ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。なお、事件が移送されたときは、はじめから、移送を受けた審査官に審査請求があったものとみなす。(審査会法第8条) 4.社会保険審査官の決定 (1)却下 審査請求が不適法であって補正することができないものであるときは、審査官は、決定をもって、これを却下しなければならない。(審査会法第6条) (2)補正 審査請求が不適法であって補正することができるものであるときは、審査官は、相当の期間を定めて、補正を命じなければならない。なお、審査官は、審査請求人が期間内に補正しないときは、決定をもって、審査請求を却下することができる。但し、不適法が軽微なものであるときは、この限りでない。 (審査会法第7条) (3)本案の決定 審査官は、審理を終えたときは、審査請求の全部又は一部を容認し、又は棄却する決定をしなければならない。(審査会法第13条) (4)決定の方式 決定は、文書をもって行い、且つ、理由を附し、決定をした審査官が、これに署名押印しなければならない。また、決定書には、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる旨及び再審査請求期間を記載しなければならない。(審査会法第14条) (5)決定の効力発生 決定は、審査請求人に送達された時に、その効力を生ずる。(審査会法第15条第1項) 5.決定の拘束力 決定は、保険者その他の利害関係人を拘束する。(審査会法第16条) ※原処分をした保険者は、容認の決定があった場合には、その趣旨に従って処分しなければならない。 ■社会保険審査会 1.厚生労働大臣の所轄の下に設置される、合議制の第二次審査機関である。(審査会法第19条) 2.社会保険審査会は、委員長及び5人の委員をもって組織される。委員長及び委員は、人格が高潔であって、社会保障に関する識見を有し、かつ、法律または社会保険に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、厚生労働大臣が任命する。 なお、任期は3年である。(審査会法第20条〜22条) ■再審査請求に関する事項 1.再審査請求の期間 原則として、再審査請求は、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。但し、正当な事由によりこの期間内に審査請求をすることができなかったことを疎明したときは、この限りでない。(審査会法第32条第1項及び第3項)
2.再審査請求の方式 (1)再審査請求は、文書又は口頭ですることができる。(審査会法第32条第4項) (2)再審査請求は、原処分に関する事務を処理した地方社会保険事務局、社会保険事務所若しくは健康保険組合等又は審査請求人の居住地を管轄する地方社会保険事務局、社会保険事務所若しくは当該地方社会保険事務局に置かれた審査官を経由してすることができる。(審査会法第32条第4項) 3.社会保険審査会の審理 (1)審理の期日及び場所 審査会は、審理の期日及び場所を定め、当事者等に通知しなければならない。(審査会法第36条) (2)審理の公開 審理は、公開しなければならない。但し、当事者の申立があったときは、公開しないことができる。(審査会法第37条) (3)意見の陳述等 当事者及びその代理人は、審理期日に出頭し、意見を述べることができる。(審査会法第39条第1項) (4)審理のための処分 審査会は、審理を行うため必要があるときは、当事者等の申立てにより又は職権で、参考人等からの意見徴収等をすることができる。(審査会法第40条) (5)調書 審査会は、審理の期日における経過について、調書を作成しなければならない。なお、利害関係人は、厚生労働省令の定める手続に従い、調書を閲覧することができる。(審査会法第41条) (6)合議 審査会の合議は、公開しない。(審査会法第42条) ※審査会での審理が終了すると、合議の上、裁決を下すことになるが、この場合の合議は非公開である。 4.社会保険審査会の裁決 (1)裁決の方式 裁決は、文書をもって行い、且つ、理由を附し、審査長及び合議に関与した審査員が、これに署名押印しなければならない。審査長又は合議に関与した審査員が署名押印することができないときは、合議に関与した審査員又は審査長が、その事由を附記して署名押印しなければならない。(審査会法第43条) (2)却下 再審査請求が不適法であって補正することができないものであるときは、審査会は、裁決をもって、これを却下しなければならない。(審査会法第44条) (3)補正 再審査請求が不適法であって補正することができるものであるときは、審査会は、相当の期間を定めて、補正を命じなければならない。なお、審査会は、再審査請求人が期間内に補正しないときは、裁決をもって、再審査請求を却下することができる。但し、不適法が軽微なものであるときは、この限りでない。(審査会法第43条) (4)手続の受継 再審査請求人が、再審査請求の決定前に死亡したときは、承継人が、再審査請求の手続を受け継ぐものとする。(審査会法第43条) (5)再審査請求の取下げ 再審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも再審査請求を取り下げることができる。再審査請求の取下げは、文書でしなければならない。(審査会法第43条) (6)本案の裁決 審査会は、審理を終えたときは、再審査請求の全部又は一部を容認し、又は棄却する裁決をしなければならない。(審査会法第43条) (7)裁決の効力発生 裁決は、再審査請求人に送達された時に、その効力を生ずる。(審査会法第43条) ■「裁判上の請求」とは? 請求は、民法第147条の規定により、時効の中断事由となるが、民法第153条の規定により、時効の中断の効果を発生させるためには、6ヶ月以内に裁判上の請求等をおこなう必要がある。 したがって、審査請求又は再審査請求を裁判上の請求とみなすとは、請求後あらためて裁判の請求を行うことなく、請求即裁判上の請求とみなして、時効中断の効果を発生されることになる。 ただし、請求に却下又は取下げがあった場合には、時効中断の効果は生じない。 ■「不服の理由とすることができない」とは? 資格又は標準報酬に関する処分が確定したにもかかわらず、当該処分に基づく保険給付の際に、資格又は標準報酬に関する処分に不服があるとして争うことは、確定した内容をさらに争うことになるため、認められていない。 もし、審査請求又は再審査請求したとしても、却下事由となる。
■要旨 保険料その他この法律の規定による徴収金の賦課若しくは徴収の処分又は保険料等の督促及び滞納処分(法第180条)の規定による処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができる。(法第190条) ■社会保険審査会に対する審査請求? 保険料の賦課徴収、滞納処分に関する審査請求については、公売処分に関するものが多く、公売手続きの適法性とともに、公売価格の妥当性が問題となり、鉱業財団、工業財団などの価格鑑定をも必要とする場合が生ずるので、このような問題を独任制の社会保険審査官に処理されるのは妥当でないために保険料等の処分に不服がある場合には、 社会保険審査会に対して審査請求することになっている。 ■社会保険審査会 被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある場合に再審査請求と同様 ■社会保険審査会の審査方式 被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある場合に再審査請求と同様 ※文中の「再審査請求」を「審査請求」に読み替える。
■再審査請求又は審査請求前置主義 健康保険上不服申立できる処分(法第189条第1項又は第190条)の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求又は審査請求に対する社会保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。(法第192条) ■例外規定 次に該当する場合には、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。(行事訴法第8条第2項) 1.不服申立をしてから3ヶ月を経過しても裁決がないとき 2.処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき 3.その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき ■被告適格等 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の区分に応じてそれぞれに定める者を被告として提起しなければならない。(行事訴法第11条第1項) 1.処分の取消しの訴え → 当該処分をした保険者 2.裁決の取消しの訴え → 当該裁決をした社会保険審査会 |
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