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トップページ過去問研究室(労働保険徴収法) 平成25年雇用-第10問(法令全般関係)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成25年雇用-第10問(法令全般関係)

労働保険徴収法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)政府が労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を徴収する権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅するとされているが、この時効には援用を要せず、また、その利益を放棄することができないとされているので、時効成立後に納付義務者がその時効による利益を放棄して徴収金を納付する意思を有しても、政府はその徴収権を行使できない。

(B)所轄都道府県労働局歳入徴収官は、労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を納付しない事業主に対して、期限を指定して督促を行うが、指定された期限までに納付しない事業主からは、指定した期限の翌日から完納の前日までの日数に応じ、所定の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する。

(C)労働保険料を滞納する事業主に対する所轄都道府県労働局歳入徴収官の督促は、納付義務者に督促状を送付することによって行われるが、督促の法的効果として、
@指定期日までに督促にかかる労働保険料を完納しないときは滞納処分をなすべき旨を予告する効力を有し、滞納処分の前提要件となるものであること
A時効中断の効力を有すること
B延滞金徴収の前提要件となること
が挙げられる。

(D)事業主は、雇用保険の被保険者が負担すべき労働保険料相当額を被保険者の賃金から控除することが認められているが、この控除は、被保険者に賃金を支払う都度、当該賃金に応ずる額についてのみ行うことができるものとされているので、例えば、月給制で毎月賃金を支払う場合に、1年間分の被保険者負担保険料額全額をまとめて控除することはできない。

(E)労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされている。



■解説

(A)正解
法41条
労働保険徴収法の規定による徴収金を徴収する権利又は徴収金の還付を受ける権利の消滅時効の期間は2年とされている。労働保険徴収法41条では、消滅時効の絶対的効力には触れていないが、徴収金の徴収手続は労働保険徴収法に定めのない場合は国税徴収の例による(法29条)こととされていることから、国税通則法第72条第2項及び同法74条第2項の規定により「時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないもの」とされている。すなわち、請求権についての時効抗弁権が法定されているわけで、時効の完成により、当該権利は当然に消滅することになる。
よって、問題文は正解となる。

(B)誤り
法27条、法28条1項
労働保険料等を所定の納期限(納入告知書等によって指定された納期限)までに納付しないときは、政府は、別に納期限を指定しその納付を督促すべきものとされている。そして督促があったにもかかわらず事業主がなお納付しない場合は、事業主からは、労働保険料の額等につき所定の割合で、納期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収することとされている。
よって、「指定した期限の翌日から」とした問題文は誤りとなる。

(C)正解
法27条1項、法28条1項、法41条
労働保険料等を滞納する事業主に対する督促は、督促状を納付義務者に送付することによって行われる。口頭その他の方法によって行われるものは、督促ではなく、単なる催告行為にとどまり、これによっては正規の督促によって生ずる法律効果、例えば、時効の中断の効力、滞納処分の執行権限等は発生しない。
督促の法的効果は次のとおりとされている。
(1)指定期日までに督促に係る労働保険料等を完納しないときは滞納処分をなすべき旨を予告する効力を有し、滞納処分の前提要件となるものであること。(民事上の強制執行の場合における債務名義の送達に相当するものであること。)
(2)時効中断の効力を有すること。
(3)延滞金徴収の前提要件となること。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
法32条1項、則60条1項
事業主が被保険者に賃金を支払う際に、被保険者の負担すべき労働保険料相当額を当該賃金から控除することができるが、この賃金からの控除は、「被保険者に賃金を支払う都度、当該賃金に応ずる」額についてのみ行うことができるものであるから、例えば、月給制で毎月賃金を支払う場合に、1年間分の被保険者負担保険料額全額をまとめて控除したり、毎月控除せず、1か月おきに2か月分に相当する被保険者負担保険料額をまとめて控除したりすることはできない。また、賃金が月2回払いである場合には、当該月2回の賃金支払いのつど当該賃金額に応ずる被保険者負担保険料額を控除しなければならず、1回分の支払賃金から1か月分に相当する被保険者負担保険料額をまとめて控除することはできない。
もとより、事業主がこの控除の権限を行使するか否かは、事業主の自由な選択に委ねられており、事業主が被保険者の負担すべき保険料額に相当する額を賃金から控除しないときは、賃金の全額を被保険者に支払った後、その者の負担すべき保険料を徴収することになる。
よって、問題文は正解となる。

(E)正解
法29条
「先取特権」とは、法律で定められている一定の債権を有する者が、債務者の財産について他の債権者に優先して弁済を受けることを内容とする権利である。
私法上の債権については、いわゆる債権者平等の原則を基調として一般に債権者相互間に優劣の差異が認められないのに対し、労働保険料その他徴収法の規定による徴収金債権については、国税又は地方税に次ぐ順位の先取特権が認められ、私債権に先立って徴収する。すなわち、債務者の財産を強制的に処分し、その処分代金をもってその債権の弁済に充てる場合において優先的に充当徴収することができるのである。
よって、問題文は正解となる。

  

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