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トップページ過去問研究室(労働保険徴収法) 平成28年雇用-第10問(時効、書類の保存等)
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■平成28年雇用-第10問(時効、書類の保存等)

時効、書類の保存等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

(ア)労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を徴収する権利は、国税通則法第72条第1項の規定により、5年を経過したときは時効によって消滅する。

(イ)時効で消滅している労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金について、納付義務者がその時効による利益を放棄して納付する意思を示したときは、政府はその徴収権を行使できる。

(ウ)政府が行う労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金の徴収の告知は、時効中断の効力を生ずるので、納入告知書に指定された納期限の翌日から、新たな時効が進行することとなる。

(エ)事業主若しくは事業主であった者又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体は、労働保険徴収法又は労働保険徴収法施行規則の規定による書類をその完結の日から3年間(雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿にあっては、4年間)保存しなければならない。

(オ)厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長又は公共職業安定所長が労働保険徴収法の施行のため必要があると認めるときに、その職員に行わせる検査の対象となる帳簿書類は、労働保険徴収法及び労働保険徴収法施行規則の規定による帳簿書類に限られず、賃金台帳、労働者名簿等も含む。


(A)一つ

(B)二つ

(C)三つ

(D)四つ

(E)五つ

■解説

(ア)誤り
法41条1項
労働保険徴収法の規定による徴収金を徴収する権利又は徴収金の還付を受ける権利の消滅時効の期間は2年とされている。
民法は、債権は10年間これを行使しないときに消滅するとし、国税通則法は、国税の徴収目的とする国の権利及び還付金等に係る国に対する請求権は5年間行使しないときは時効により消滅するとしているが、労働保険徴収法の規定による労働保険料等を徴収する権利及びその還付を受ける権利は、その行使が容易であり、またこれらの権利関係をいたずらに長期にわたって不安定な状態のもとにおくことは、事務を一層複雑化するおそれがあるので、2年間の短期消滅時効にかからせることとしたものである。
よって、「国税通則法第72条第1項の規定により、5年年」とした問題文は誤りとなる。

(イ)誤り
法41条、国税通則法72条、国税通則法74条
労働保険徴収法では、消滅時効の絶対的効力には触れていないが、国税通則法72条2項及び同法74条2項の規定により、「時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないもの」とされている。すなわち、請求権についての時効抗弁権が法定されているわけで、時効の完成により、当該権利は当然に消滅することになる。
よって、「政府はその徴収権を行使できる。」とした問題文は誤りとなる。

(ウ)正解
法41条2項
時効の中断とは、中断事由が生ずるとそれまでに経過した時効期間が効力を失うことをいい、中断事由が終了すれば再び時効は進行するが、中断前の時効期間は通算されない。政府が労働保険料等の徴収の告知又は督促を行った場合には、「催告については、6か月以内に裁判上の請求その他の行為を行わない限り、時効中断の効果は生じない」旨の民法の規定にかかわらず、時効中断の効力を生ずることとされている。
よって、問題文は正解となる。

(エ)正解
則72条
事業主若しくは事業主であった者又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体は、労働保険徴収法又は労働保険徴収法施行規則による書類を、その完結の日から3年間(雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿は4年間)保存しなければならないとされている。
よって、問題文は正解となる。

(オ)正解
法43条
行政庁は、労働保険徴収法の施行のため必要があると認めるときは、当該職員に、保険関係が成立し、若しくは成立していた事業の事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体の事務所に立ち入り、関係者に対して質問させ、又は帳簿書類(その作成、備付け又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成、備付け又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)の検査をさせることができることになっている。
このうち、「当該職員」とは行政庁の職員、すなわち、都道府県労働局長、労働基準監督署長又は公共職業安定所長の補助機関たる職員のほか、厚生労働大臣の補助機関たる職員も含まれることとされており、「帳簿書類」とは、労働保険徴収法及び同法施行規則の規定による帳簿書類のみならず、賃金台帳、労働者名簿その他必要と認められるいっさいの帳簿書類とされている。
よって、問題文は正解となる。

※誤っているものは、(ア)(イ)であるため、(B)が正解となる。

  

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