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トップページ過去問研究室(労働保険徴収法) 平成25年労災-第10問(労災保険のメリット制)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成25年労災-第10問(労災保険のメリット制)

労災保険のいわゆるメリット制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)特別支給金規則に定める特別支給金は、業務災害に係るものであっても全て、メリット収支率の算出においてその計算に含めない。

(B)平成22年度から同24年度までの連続する3保険年度の各保険年度における確定保険料の額が100万円以上であった有期事業の一括の適用を受けている建設の事業には、その3保険年度におけるメリット収支率により算出された労災保険率が平成25年度の保険料に適用される。

(C)休業補償給付が支給された場合のメリット収支率の計算における保険給付の額の算定は、休業補償給付のうち当該負傷又は疾病に関する療養の開始後2年を経過する日前に支給すべき事由の生じたものの額を合計した額により行われる。

(D)メリット収支率を算定する基礎となる保険給付の額には、特定の業務に長期間従事することによって発生する疾病であって労働保険徴収法施行規則で定めるものにかかった者に係る保険給付の額は除くこととされているが、同規則で定める疾病には、建設の事業にあっては、粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症、石綿にさらされる業務による肺がんが含まれる。

(E)継続事業に対する労働保険徴収法第12条による労災保険率は、メリット制適用要件に該当する事業のいわゆるメリット収支率が100%を超え、又は75%以下である場合に、厚生労働大臣は一定の範囲内で、当該事業のメリット制適用年度における労災保険率を引き上げ又は引き下げることができる。



■解説

(A)誤り
法12条3項、則18条の2
メリット収支率は、基準となる3月31日以前の連続する3保険年度の間における業務災害に関する保険給付及び特別支給金の額と、労災保険料率に応ずる一般保険料額から非業務災害率に応ずる部分を減額した額に第一種特別加入保険料の額から特別加入非業務災害率(非業務災害から二次健康診断等給付に係る率を減じた率)に応ずる部分の額を減じた額を加えた額に第一種調整率を乗じて得た額等から計算される率であるが、次のものは計算の基礎から除かれることとされている。
1.失権後の遺族補償一時金
2.障害補償年金差額一時金
3.特定疾病に係る保険給付の額
4.第三種特別加入保険料額及び第三種特別加入者に係る保険給付の額
5.上記1から4に係る特別支給金
よって、「全て、メリット収支率の算出においてその計算に含めない。」とした問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法12条3項、則17条3項
メリット収支率の算定の基礎となる期間は、3月31日以前の連続する3保険年度の間とされ、当該3月31日の属する保険年度の翌々年度に係る労災保険料率をメリット収支率に応じて上下させることとされている。
これを問題文に当てはめると平成22年度から平成24年度までの連続する3保険年度において算出されたメリット収支率は平成26年度(平成25年3月31日の翌々年度)から適用されることになる。
よって、「平成25年度の保険料に適用される」とした問題文は誤りとなる。
なお、継続事業(一括有期事業を含む。)におけるメリット制が適用される事業規模の要件は、連続する3保険年度中の各保険年度において次のいずれかに該当する事業である。
1.100人以上の労働者を使用する事業
2.20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、災害度係数(労災保険率から非業務災害率を控除した率を労働者数に乗じて得た数)が0.4以上の事業
3.一括有期事業である建設の事業及び立木の伐採の事業については、当該保険年度の確定保険料の額が40万円以上の事業

(C)誤り
法12条3項、則18条2項
メリット収支率の算定に際しては次の保険給付の額を算入することとされている。
(1)療養補償給付については、療養の開始後3年を経過する日より前までに支給すべき事由の生じたものの額を合計した額
(2)休業補償給付については、休業補償給付のうち療養の開始後3年を経過する日より前に支給すべき事由の生じたものの額を合計した額
(3)介護補償給付については、療養の開始後3年を経過する日の属する月の前月分までの月分のものの額を合計した額
(4)傷病補償年金については、療養開始後3年を経過する日の属する月の前月までの月分のものの額を合計した額
よって、「療養の開始後2年を経過する日前」とした問題文は誤りとなる。

(D)正解
法12条3項、則17条の2
メリット収支率を算定する基礎となる保険給付の額には、特定疾病(特定の業務に長期間従事することによって発生する疾病であって労働保険徴収法施行規則で定めるものにかかった者)に係る保険給付の額は除くこととされている。
特定疾病の種類としては次のものが規定されている。
(1)港湾貨物取扱事業又は港湾荷役業における非災害性腰痛
(2)林業又は建設の事業における振動障害
(3)建設の事業におけるじん肺症
(4)建設の事業、港湾貨物取扱事業又は港湾荷役業における石綿にさらされる業務又は中皮腫
(5)建設の事業における著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法12条3項
メリット制は、その適用を受けることができる事業であって、連続する3保険年度中の最後の保険年度の属する3月31日(基準日)において、労災保険に係る保険関係成立後、3年以上経過しており、連続する3保険年度間のトータル収支率が100分の85を超え、又は、100分の75以下である場合に適用されることになっている。
よって、「メリット収支率が100%を超え」とした問題文は誤りとなる。

  

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