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トップページ過去問研究室(労働保険徴収法) 平成27年労災-第10問(下請負事業の分離)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成27年労災-第10問(下請負事業の分離)

下請負事業の分離に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
なお、本問において、「下請負事業の分離」とは、労働保険徴収法第8条第2項の規定に基づき、元請負人の請負に係る事業から下請負部分を分離し、独立の保険関係を成立させることをいう。


(A)厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合の元請負人及び下請負人が、下請負事業の分離の認可を受けようとするときは、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内であれば、そのいずれかが単独で、当該下請負人を事業主とする認可申請書を所轄都道府県労働局長に提出して、認可を受けることができる。

(B)厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合の元請負人及び下請負人が、下請負事業の分離の認可を受けるためには、当該下請負人の請負に係る事業が建設の事業である場合は、その事業の規模が、概算保険料を算定することとした場合における概算保険料の額に相当する額が160万円未満、かつ、請負金額が1億8,000万円未満でなければならない。

(C)厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合の元請負人及び下請負人が、下請負事業の分離の認可を受けるためには、当該下請負人の請負に係る事業が立木の伐採の事業である場合は、その事業の規模が、素材の見込生産量が千立方メートル未満、かつ、請負金額が1億8,000万円未満でなければならない。

(D)厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合の下請負人を事業主とする認可申請書については、天災、不可抗力等の客観的理由により、また、事業開始前に請負方式の特殊性から下請負契約が成立しない等の理由により期限内に当該申請書を提出できない場合を除き、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に、所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

(E)厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合の元請負人及び下請負人が、下請負事業の分離の認可を受けた場合、当該下請負人の請負に係る事業を一の事業とみなし、当該下請負人のみが当該事業の事業主とされ、当該下請負人以外の下請負人及びその使用する労働者に対して、労働関係の当事者としての使用者となる。



■解説

(A)誤り
法8条2項、則8条
数次の請負事業の一括は、法律上当然に行われるものであるのに対し、下請負事業の分離は、元請負人及び下請負人が申請し、認可があったときに元請負人の請負に係る事業から下請負部分を分離し、独立の保険関係を成立させることをいう。
下請負事業の分離については、厚生労働大臣の認可を要することとされているが、都道府県労働局長に認可に関する権限が委任されており、下請負事業分離の認可を受けようとするときは、元請負人及び当該下請負人が共同で、保険関係の成立の日の翌日から起算して10日以内に「下請負人を事業主とする認可申請書」を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出しなければならないことになっている。
よって、「そのいずれかが単独で」とした問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法8条2項、則9条
数次の請負事業の一括は、法律上当然に行われるものであるのに対し、下請負事業の分離は、元請負人及び下請負人が申請し、認可があったときに元請負人の請負に係る事業から下請負部分を分離し、独立の保険関係を成立させることをいう。
この下請負事業の分離については、下請負人の請負に係る建設の事業規模が、有期事業の一括の要件には該当しない規模のものであること、したがって、概算保険料が160万円以上となるか、又は、請負金額が1億8,000万円以上であるか、いずれかであることが要件とされている。
よって、「概算保険料の額に相当する額が160万円未満、かつ、請負金額が1億8,000万円未満」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
法8条、則7条、則8条
請負事業の一括の対象となる厚生労働省令で定める事業は、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち建設の事業とされている。
このような規定を設けた趣旨は、建設の事業においては、請負事業者がその請負った工事の全部又は一部をさらに他の請負事業者に請け負わせる場合がむしろ普通であり、保険技術的にも、有機的関連をもって行われる一体の各種工事を個々に分割して法を適用することは実情にそわず、困難でもあるので、これを一括して適用することが適当であるためである。
もっとも、下請負人の請負った工事が相当規模のものである場合(有期事業の一括の対象となる規模を超え、独立の有期事業として扱うべき規模のものである場合)にもあえて元請負人のみを事業主として取り扱うことは必ずしも合理的とは限らないので、当時者が共同でする申請に基づき、実質的に事業主の地位にある下請負人を保険関係上も事業主とすること(下請負事業の分離)ができることとしている。
よって、「立木の伐採の事業である場合」とした問題文は誤りとなる。

(D)正解
法8条2項、則8条、昭和47年11月24日労徴発41号
数次の請負事業の一括は、法律上当然に行われるものであるのに対し、下請負事業の分離は、元請負人及び下請負人が申請し、認可があったときに元請負人の請負に係る事業から下請負部分を分離し、独立の保険関係を成立させることをいう。
下請負事業の分離については、厚生労働大臣の認可を要することとされているが、都道府県労働局長に認可に関する権限が委任されており、下請負事業分離の認可を受けようとするときは、元請負人及び当該下請負人が共同で、保険関係の成立の日の翌日から起算して10日以内に「下請負人を事業主とする認可申請書」を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出しなければならないことになっている。
ただし、やむを得ない理由により、期限内に提出できなかったときは、期限後であっても提出できることとされている。この「やむを得ない理由」としては、天災その他不可抗力により期限内に申請書を提出することができない場合、請負方式の特殊事情から事業開始前に下請負契約が成立せず、したがって、期限内に申請書を提出することが困難であると認められる場合等がある。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法8条2項
下請負事業の分離の認可を受けた場合、当該下請負人の請負に係る事業を一の事業とみなし、当該下請負人のみが当該事業の事業主として保険料の納付等の義務を負うことになる。
しかしながら、当該下請負人が事業主とされたからといっても、労働関係の当事者として当該下請負人以外の下請負人やその使用する労働者に対して使用者となるわけではなく、当該下請負人以外の下請負人も、当該下請負人に対して労働者となるわけではない。
よって、問題文は誤りとなる。

  

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