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■令和1年労基-第5問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)労働基準法第24条第1項は、賃金は、「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。」と定めている。

(B)賃金にあたる退職金債権放棄の効力について、労働者が賃金にあたる退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、当該意思表示は有効であるとするのが、最高裁判所の判例である。

(C)労働基準法第24条第2項にいう「一定の期日」の支払については、「毎月15日」等と暦日を指定することは必ずしも必要ではなく、「毎月第2土曜日」のような定めをすることも許される。

(D)労働基準法第25条により労働者が非常時払を請求しうる事由のうち、「疾病」とは、業務上の疾病、負傷をいい、業務外のいわゆる私傷病は含まれない。

(E)労働基準法第26条に定める休業手当は、賃金とは性質を異にする特別の手当であり、その支払については労働基準法第24条の規定は適用されない。



■解説

(A)誤り
法24条1項
賃金を通貨以外のものによる支払(実物給与)が許されるのは、厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合のほかは、法令又は労働協約に別段の定めがある場合である。
よって、問題文は誤りとなる。
なお、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことが認められている。

(B)正解
シンガー・ソーイング・メシーン事件(昭和48年1月19日)
全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、労働者が退職に際し、自らの自由な意思に基づき退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に全額払いの原則がその意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。ただし、その意思表示の効力を肯定するには、労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならないとするのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は正解となる。

(C)誤り
法24条2項
「一定の期日」は、期日が特定されるとともに、その期日が周期的に到来するものでなければならない。必ずしも、月の「15日」あるいは「10日及び20日」等と暦日を特定する必要はないから、月給について「月の末日」、週給について「土曜日」等とすることは差し支えないが、「毎月15日から20日までの間」等のように日が特定しない定めをすること、あるいは、「毎月第2土曜日」のように月7日の範囲で変動するような期日の定めをすることは許されない。ただし、所定支払日が休日に当たる場合には、その支払日を繰上げる(又は繰下げる)ことを定めるのは、一定期日払に違反しない。
よって、問題文は誤りとなる。

(D)誤り
法25条
労働者が非常時払を請求しうる事由のうち、「疾病」とは、業務上の疾病、負傷であると業務外のいわゆる私傷病であるとを問わない。
よって、「業務外のいわゆる私傷病は含まれない。」とした問題文は誤りとなる。

(E)誤り
法26条、昭和25年4月6日基収207号、昭和63年3月14日基発150号
休業手当は法11条の賃金であるから、その支払いについては、法24条の規定が適用され、休業期間の属する賃金算定期間について定められた支払日に支払わなければならない。
よって、「労働基準法第24条の規定は適用されない。」とした問題文は誤りとなる。

  

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