社会保険労務士試験に楽に合格する方法論を研究するサイト
社会保険労務士試験情報局
トップページ過去問研究室(労働基準法) 令和1年労基-第6問(労働基準法に定める労働時間等)
■社会保険労務士試験過去問研究室





■令和1年労基-第6問(労働基準法に定める労働時間等)

労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)労働基準法第32条第2項にいう「1日」とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいい、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とする。

(B)労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制について、清算期間が1か月を超える場合において、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた場合は時間外労働に該当するため、労働基準法第36条第1項の協定の締結及び届出が必要となり、清算期間の途中であっても、当該各期間に対応した賃金支払日に割増賃金を支払わなければならない。

(C)労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。

(D)「いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは、定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており、これらの仕組みが雇用主により誠実
に実行されているほか、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる。」とするのが、最高裁判所の判例である。

(E)労働基準法第39条に定める年次有給休暇は、1労働日(暦日)単位で付与するのが原則であるが、半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用されている場合には認められる。



■解説

(A)正解
法32条2項、昭和63年1月1日基発1号
「1日」とは、原則として、午前零時から午後12時までのいわゆる暦日を意味する。労働基準法では、最も重要な条件の一つである労働時間の基準について、「1日」という単位を規定しながら、その定義について何も規定していないが、特別な規定がない以上、それは民法上の一般原則に従って、午前零時から午後12時までの暦日の意味であると解すべきである。
しかしながら、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時間の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とするとされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
法32条の3、平成30年12月28日基発1228第15号
清算期間が1か月を超える場合において、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた場合は時間外労働に該当するものであり、時間外・休日労働協定の締結及び届出を要し、清算期間の途中であっても、当該各期間に対応した賃金支払日に割増賃金を支払わなければならない。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法38条の2、則24条の2
事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならないが、労使協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には届け出る必要はない。
この場合、労使協定の届け出が必要なのは、労使協定で定める時間が法定労働時間を超える場合であるので、労働時間の一部を事業場外で業務に従事する場合には、事業場内労働と事業場外労働をあわせ、法定労働時間を超えることとなるときであっても事業場外における労働時間は法定労働時間を超えないのであれば、届け出る必要はない。
よって、問題文は正解となる。

(D)誤り
日本ケミカル事件(平成30年7月19日)
「労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される。また、割増賃金の算定方法は,同条並びに政令及び厚生労働省令の関係規定(以下、これらの規定を「労働基準法37条等」という。)に具体的に定められているところ、同条は,労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解され、労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではなく、使用者は、労働者に対し,雇用契約に基づき、時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払うことにより、同条の割増賃金の全部又は一部を支払うことができる。そして、雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである。」というのが最高裁判所の判例である。
よって、問題文は誤りとなる。

(E)正解
法39条1項、昭和24年7月7日基収1428号、昭和63年3月14日基発150号、平成21年5月29日基発0529001号
年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はないが、半日単位での年次有給休暇については、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であり、かつ、本来の取得方法による年次有給休暇取得の阻害とならない範囲内で運用される限りにおいては、むしろ年次有給休暇の取得促進に資するものと考えられている。
よって、問題文は正解となる。

  

→社会保険労務士試験過去問研究室(労働基準法)に戻る
Copyright (C) 2005 社会保険労務士試験情報局 All Rights Reserved