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■平成14年労基-第2問(労働基準法に定める労働契約等)

労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)いわゆる在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、原則として出向元及び出向先に対してはそれぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法等の適用があるが、そのうち労働契約関係の基本である賃金に関する事項については出向元のみが使用者となり、それ以外の事項についでは、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて、出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものと解されている。

(B)休職に関する事項は、使用者がこれに関する定めをする場合には、労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条第1項の規定により、労働契約の締結に際し労働者に対して明示しなければならない労働条件とされており、また、それが当該事業場の労働者のすべてに適用される定めであれば、同法第89条に規定する就業規則の必要記載事項でもある。

(C)労働基準法第15条では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、そのうち一定の事項については書面の交付により明示しなければならないとされているが、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項もこの書面の交付により明示しなければならない事項に含まれている。

(D)労働基準法第16条においては、使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないとされているが、使用者が労働者の親権者又は身元保証人との間で、これら親権者又は身元保証人が当該労働者の行為について違約金又は損害賠償額の支払義務を負担する契約を締結しても、それは本条に違反するものではない。

(E)使用者が前借金その他労働をすることを条件とする前貸の債権と賃金を相殺することは労働基準法第17条において禁じられているので、例えば使用者からの住宅建設資金の貸付に対する返済金のように融資額及び返済額ともに相当高額に上り、その返済期間も相当長期間にわたるものについてはすべて、たとえ同法第24条第1項の規定に基づく賃金控除に係る労使協定がある場合であっても、賃金との相殺はできない。



■解説

(A)誤り
法10条、昭和61年6月6日基発333号、平成11年3月31日基発168号
在籍型出向の場合は、「出向元」、「出向先」、「出向労働者」の三者間の取り決めによって定められた権限と責任に応じて、出向元の使用者又は出向先の使用者が、出向労働者について労働基準法等における使用者のとしての責任を負う。
もちろん「賃金に関する事項」も同様であり、出向元のみが当然に使用者になることはない。

(B)正解
法15条1項、法89条10号、則5条1項11号
「休職に関する事項」は、使用者が定めをする場合、労働契約の締結に際し、労働条件として明示しなければならない相対的明示事項とされてる。
また、それが事業場のすべての労働者に適用される定めである場合は、就業規則に明示しなければならない相対的必要記載事項となる。

(C)誤り
法15条1項、則5条1項
「健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項」は、労働契約の締結に際し、書面交付することにより明示しなければならない事項に含まれていない。

(D)誤り
法16条
労働契約の不履行についての違約金の定め、又は損害賠償額を予定する契約を禁止する法16条の規定は、当該契約の相手方を労働者本人に限っていないために、使用者が労働者の親権者又は身元保証人と違約金又は損害賠償額を予定する契約を締結することも禁止されている。

(E)誤り
法17条
法17条の「前借金相殺の禁止」の規定は、金銭の貸借による労働者の身分的拘束を防止する趣旨である。
よって、使用者からの住宅建設資金の貸付に対する返済金のように融資額及び返済額ともに相当高額に上り、その返済期間も相当長期間にわたるものであっても、貸付の原因が真に労働者の便宜のためのものであり、労働者からの申出に基づくものであること、貸付期間は必要を満たしえる範囲であり、賃金や退職金などによって生活を脅威し得ない程度に返済可能であること、返済前であっても退職の自由が制約されていないこと等、当該貸付金が身分的拘束を伴わないことが明らかである場合は法17条に抵触しないとされている。

  

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