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■平成14年労基-第3問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)商法による新株予約権(いわゆるストックオプション)制度では、この制度から得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているが、労働の対償と考えられ、労働基準法第11条の賃金に該当する。

(B)平均賃金は、原則としてこれを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して算定するものとされており、その期間は、賃金締切日がある場合においては直前の賃金締切日から起算することとされているが、雇入後3か月未満の労働者の平均賃金を算定する場合には、原則的な計算期間の3か月に満たない短期間であるので、賃金締切日の有無にかかわらずすべて算定事由発生日以前雇入後の全期間について計算することとされている。

(C)労働基準法第37条第4項に基づく同法施行規則第21条の規定によって、割増賃金の計算の基礎となる賃金には住宅手当は算入されないこととされており、この算入されない住宅手当には、例えば、賃貸住宅の居住者には3万円、持家の居住者には1万円というように、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされている手当も含まれる。

(D)年間賃金額を予め定めるいわゆる年俸制を採用し、就業規則により、例えば決定された年俸の17分の1を月例給与として支給し、決定された年俸の17分の5を二分して6月と12月に賞与として支給することを定めて支給しているような場合には、これらの賞与は、労働基準法第 37条の割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外することはできない。

(E)労働基準法第24条第1項においては、賃金は、通貨で支払わなければならないと規定されているが、同項ただし書において、法令に別段の定めがある場合、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができると規定されている。



■解説

(A)誤り
法11条、平成9年6月1日基発412号
ストックオプションの権利行使は、労働者の判断に委ねられているため、この制度から得られる利益は労働の対償ではなく法11条の賃金には該当しない。

(参考)
ストックオプションとは、企業の役職員が、一定期間内に、あらかじめ決められた価格で、所属する企業の自社株式を購入できる権利をいう。
株価が上がれば上がるほど、権利を所有している者が得られる利益も大きくなるため、業績に貢献した役職員の褒賞として利用される場合もある。
ちなみに、税法上はストックオプションからの利益が「一時所得」か「給与所得」か争われた訴訟で最高裁判所は「労働の対価として与えられた権利であり、給与取得と見なすべき」と判断している。(所得税更正処分等取消請求事件平成17年1月25日最高裁判決)

(B)誤り
法12条、昭和23年4月22日基収1065号
雇入後3ヶ月未満の労働者の平均賃金を算定する場合であっても、賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から起算する。
なお、直前の賃金締切日から計算すると1賃金算定期間に満たない場合は、事由発生日から計算する。

(C)誤り
法37条4項、則21条3号、平成11年3月31日基発170号
住宅の形態ごとに一律に定額で支給されることになっている手当は割増賃金の計算の基礎から控除できる住宅手当に含まれない。
なお、割増賃金の計算の基礎から除外される住宅手当は、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいう。

(D)正解
法37条4項、則21条5号、平成12年3月8日基収78号
割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外する「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」とは、支給額があらかじめ確定されていないものをいう。
よって、問題文のような場合は、支給額が確定しているので、割増賃金の計算の基礎となる賃金から控除することはできない。

(E)誤り
法24条1項
賃金を通貨以外のもので支給することが認められているのは、「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合」又は「厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合」に限られている。
よって、労使協定を締結したとしても賃金を通貨以外のもので支払うことは認められない。

  

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