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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成18年労基-第5問(労働基準法に定める割増賃金等)
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■平成18年労基-第5問(労働基準法に定める割増賃金等)

労働基準法に定める割増賃金等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、賃金支払の便宜上の取扱いと認められるから、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。

(B)労働基準法第37条には、「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と規定されていることから、同法第37条に規定する割増賃金は、同法第33条又は第36条第1項の規定に基づき労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合に支払うべきものであって、これらの規定による手続を必要とする時間外又は休日の労働であっても、これらの規定による手続をとらずに行われたものに対しては割増賃金の支払の必要はない。

(C)週休1日制の事業場において、就業規則に休日を振り替えることができる旨の規定を設け、この規定に基づき、あらかじめ、ある週の休日を翌週の労働日と振り替えた場合には、当該休日は労働日となりその日に労働させても、休日労働とはならないが、休日を振り替えたことにより、その週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する割増賃金を支払わなければならない。

(D)最高裁判所の判例によると、労働基準法第32条の労働時間を延長して労働させることにつき、使用者が、36協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、当該就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するのを相当とする、とされている。

(E)賃金が出来高払制その他の請負制によって定められている者が、労働基準法第36条第1項又は第33条の規定によって法定労働時間を超えて労働をした場合、当該法定労働時間を超えて労働をした時間については、使用者は、その賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該法定労働時間を超えて労働をした時間数を乗じた金額の2割5分を支払えば足りる。



■解説

(A)正解
法24条1項、昭和63年3月14日基発150号
1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと及び1か月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、いずれも賃金支払の便宜上の取扱いと認められるから、法24条違反とはならないとされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)誤り
法37条、昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号、小島撚糸事件(昭和35年7月14日最高裁判決)
36協定なしに時間外又は休日労働させた場合でも、割増賃金の支払義務がある。
この点について「適法な時間外労働等について割増賃金支払義務があるならば違法な時間外労働等の場合には一層強い理由でその支払い義務があるものと解すべきは事理の当然とすべきである」というのが最高裁判所の判断である。
よって、「これらの規定による手続をとらずに行われたものに対しては割増賃金の支払の必要はない」とした問題文は誤りである。

(C)正解
法35条、昭和22年11月27日基発401号、昭和63年3月14日基発150号
就業規則に定める休日の振替規定により休日を振り替える場合、当該休日は労働日となるので休日労働とはならないが、振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する36協定及び割増賃金の支払が必要となる。
よって、問題文は正解である。

(D)正解
日立製作所武蔵工場事件(平成3年11月28日最高裁判決)
36協定の締結及び届出がなされ、就業規則には、一定の業務上の必要があれば、時間外労働させることができると定めてある場合には、個別の労働者の同意なしに使用者は時間外労働を命じることができるかどうかについて、最高裁判所は「時間外労働につき、いわゆる36協定が締結されて所轄労働基準監督署に届出られ、就業規則に、当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働する義務を負う。」という判断をした。
よって、問題文は正解である。

(E)正解
法37条、則19条1項6号、昭和23年11月25日基収3052、平成6年3月31日基発181号、平成11年3月31日基発168号
出来高払制その他の請負制によって定められた労働者に対しては、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数(時間外分も含む)で除した金額に延長労働時間数を乗じた金額の12割5分(通常賃金分と時間外の割増賃金)を支払う必要はなく、2割5分(時間外の割増賃金)を支払えば差し支えないとされている。
これは、時間外の労働に対する時間当たり賃金、すなわち10割に該当する部分は、すでに基礎となった賃金総額の中に含められているので加給すべき賃金額は、計算額の2割5分以上であれば足りることになるからである。
よって、問題文は正解となる。
平成22年4月1日施行の法改正により1か月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が、現行の2割5分から5割に引き上げられた。ただし、中小企業(事業場単位ではなく、企業単位で判断)については、当分の間、法定割増賃金率の引上げは猶予されており、施行から3年経過後に改めて検討することとされている。なお、休日労働(3割5分)と深夜労働(2割5分)の割増賃金率は、変更ないので注意すること。(法37条1項、法138条)

  

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