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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成20年労基-第5問(労働基準法に定める年次有給休暇)
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■平成20年労基-第5問(労働基準法に定める年次有給休暇)

労働基準法に定める年次有給休暇に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)年次有給休暇の権利は、労働基準法第39条所定の要件を満たすことによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまって始めて生ずるものではないとするのが最高裁判所の判例である。

(B)労働基準法第39条に基づく年次有給休暇の権利は、雇入れの日から3か月しか経たない労働者に対しては発生しない。

(C)労働者の年次有給休暇の時季指定に対し、労働基準法の趣旨として、使用者は、できるだけ労働者が指定した時季に休暇をとれるよう状況に応じた配慮をすることが要請されているものとみることができるとするのが最高裁判所の判例である。

(D)労働基準法第39条第6項の規定に基づき、労使協定により年次有給休暇の計画的付与の定めがなされた場合には、使用者は、年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、労働者の時季指定にかかわらず、当該労使協定の定めに従って年次有給休暇を付与することができる。(一部改正)

(E)使用者は、労働基準法附則第136条の規定により、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされているが、不利益な取扱いの理由について行政官庁の認定を受けた場合は、この規定は適用されない。



■解説

(A)正解
林野庁白石営林署事件(昭和48年3月2日最高裁判決)
最高裁判所は、年次有給休暇について「労基法39条1、2項の要件が充足されたときは、当該労働者は法律上当然に右各項所定日数の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うのであるが、この年次休暇権を具体的に行使するにあたっては、同法は、まず労働者において休暇の時季を「請求」すべく、これに対し使用者は、同条3項但書の事由が存する場合には、これを他の時季に変更させることができるものとしている。かくのごとく、労基法は同条3項において「請求」という語を用いているけれども、年次有給休暇の権利は、前述のように、同条1、2項の要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまって始めて生ずるものではなく、また、同条3項にいう「請求」とは、休暇の時季にのみかかる文言であって、その趣旨は、休暇の時季の「指定」にほかならないものと解すべきである。」と判示した。
よって、問題文は正解となる。

(B)正解
法39条
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならないことになっている。
よって、雇入れの日から3か月しか経たない労働者に対しては年次有給休暇は発生しないため問題文は正解となる。

(C)正解
弘前電報電話局事件(昭和62年7月10日最高裁判決)
最高裁判所は年次有給休暇の時季変更権の行使について「労基法39条5項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たって、代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがって、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。」と判示した。
よって、問題文は正解となる。

(D)正解
法39条6項、昭和63年3月14日基発150号
使用者は、労使協定により有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、その定めにより有給休暇を与えることができる。
そして、計画的付与の場合には、法39条5項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない。
よって、問題文は正解となる。

(参考)
1.計画的付与は、当該付与日が労働日であることを前提に行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画的付与はできない。したがって、そのような場合には、計画的付与前の年休の請求を拒否できない。(昭和63年3月14日基発150号)
2.計画的付与における5日を超える部分には、前年繰越分も含む。(昭和63年3月14日基発150号)
3.労使協定による計画的付与の対象となるのは、年次有給休暇の日数のうち、個人的事由による取得のために留保される5日を超える部分であること。なお、年次有給休暇の日数が足りない、あるいは、ない労働者を含めて年次有給休暇を計画的に付与する場合には、付与日数を増やす等の措置が必要なものであること。(昭和63年1月1日基発1号)

(E)誤り
法附則136条
使用者は、第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされている。
しかしながら、不利益な取扱いの理由について行政官庁の認定を受けた場合にこの規定を排除できる規定はなく、問題文は誤りとなる。

  

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