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■平成21年労基-第4問(労働基準法に定める賃金等)

労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)賃金は通貨で支払わなければならず、労働協約に定めがある場合であっても、小切手や自社製品などの通貨以外のもので支払うことはできない。

(B)賃金は直接労働者に支払わなければならず、労働者の委任を受けた弁護士に賃金を支払うことは労働基準法第24条違反となる。

(C)労働者が賃金債権を第三者に譲渡した場合、譲渡人である労働者が債務者である使用者に確定日付のある証書によって通知した場合に限り、賃金債権の譲受人は使用者にその支払を求めることが許されるとするのが最高裁判所の判例である。

(D)労働基準法第24条第1項の定めるいわゆる賃金全額払の原則は、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであり、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて得た利益を、使用者が支払うべき解雇無効期間中の賃金額から控除して支払うことはおよそ許されないとするのが最高裁判所の判例である。

(E)いわゆる年俸制で賃金が支払われる労働者についても、労働基準法第24条第2項のいわゆる毎月1回以上一定期日払の原則は適用されるため、使用者は、例えば年俸額(通常の賃金の年額)が600万円の労働者に対しては、毎月一定の期日を定めて1月50万円ずつ賃金を支払わなければならない。



■解説

(A)誤り
法24条
賃金は、原則として通貨で支払わなければならない(賃金の通貨払いの原則)が、例外として、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができることになっている。
よって、「労働協約に定めがある場合であっても、小切手や自社製品などの通貨以外のもので支払うことはできない」とした問題文は誤りとなる。

(B)正解
法24条、昭和63年3月14日基発150号
賃金は、原則として直接労働者に支払わなければならない(賃金の直接払いの原則)。
これは、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも賃金の直接払いの原則に違反することになり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となる。
よって、問題文は正解となる。
なお、使者に支払うことは差し支えないとされている。

(C)誤り
電電公社小倉電話局事件(昭和43年3月12日最高裁判決)
賃金の譲渡を禁止の規定はなく、譲渡を無効とする根拠はないが、賃金の支払いについては、労働基準法24条1項が適用されるため、賃金の支給前にその受給権が他に適法に譲渡された場合においても、使用者は、なお労働者に直接賃金を支払わなければならず、その譲渡人から使用者に対し支払いを求めることは許されないというのが最高裁判所の判断である。
よって、「譲渡人である労働者が債務者である使用者に確定日付のある証書によって通知した場合に限り、賃金債権の譲受人は使用者にその支払を求めることが許されるとするのが最高裁判所の判例である」とした問題文は誤りとなる。

(D)誤り
あけぼのタクシー事件(昭和62年4月2日最高裁判決)
使用者の責めに帰すべき事由で解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は当該労働者に解雇無効期間中の賃金を支払うにあたり、平均賃金の6割を超える部分の賃金額から解雇無効期間中に得た利益の額を控除して支払うことができるとするのが最高裁判所の判断である。
よって、「使用者が支払うべき解雇無効期間中の賃金額から控除して支払うことはおよそ許されないとするのが最高裁判所の判例である」とした問題文は誤りとなる。

(E)誤り
法24条
賃金は、毎月1回以上、1定の期日を定めて支払わなければならないことになっており、この規定は年俸制で賃金が支払われる場合にも適用される。
しかしながら、年俸制により賃金が支払われる場合であっても賃金の定額払いについて労働基準法には、規定されておらず、「1月50万円ずつ賃金を支払わなければならない」とした問題文は誤りとなる。(例えば、年俸600万円を毎月375,000円、年2回の賞与時に750,000円ずつ支払っても問題ない。)

  

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