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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成22年労基-第2問(労働基準法に定める解雇、退職等)
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■平成22年労基-第2問(労働基準法に定める解雇、退職等)

労働基準法に定める解雇、退職等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)定年に達したことを理由として解雇するいわゆる「定年解雇」制を定めた場合の定年に達したことを理由とする解雇は、労働基準法第20条の解雇予告の規制を受けるとするのが最高裁判所の判例である。

(B)使用者が労働基準法第20条の規定による解雇の予告をすることなく労働者を解雇した場合において、使用者が行った解雇の意思表示が解雇の予告として有効であり、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中に解雇の意思表示を受けた労働者が休業したときは、使用者は解雇が有効に成立するまでの期間、同法第26条の規定による休業手当を支払わなければならない。

(C)労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し労働者の請求に対し遅滞なく交付すれば、基本的には労働基準法第22条第1項違反とはならないが、それが虚偽であった場合(使用者がいったん労働者に示した事由と異なる場合等)には、同項の義務を果たしたことにはならない。

(D)労働基準法第22条第1項の規定により、労働者が退職した場合に、退職の事由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならず、また、退職の事由が解雇の場合には、当該退職の事由には解雇の理由を含むこととされているため、解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合であっても、使用者は、解雇の理由を証明書に記載しなければならない。

(E)労働基準法第22条第4項において、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職時等の証明書に秘密の記号を記入してはならないとされているが、この「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」は制限列挙事項であって、例示ではない。



■解説

(A)正解
法20条、秋北バス事件(昭和43年12月25日最高裁判決)
定年に達したことによって自動的に退職するいわゆる「定年退職」制を定めたものでなく、定年に達したことを理由として解雇するいわゆる「定年解雇」制を定めたものである場合に、定年に達したことを理由に解雇するときは、労働基準法20条所定の解雇の制限に服すべきものであるというのが最高裁判所の判決である。
よって、問題文は正解となる。
なお、定年退職制の場合は法20条の解雇予告の問題は発生しない。

(B)正解
法20条、法26条、昭和24年7月27日基収1701号
解雇予告をすることなく労働者を解雇した場合において、解雇の意思表示が解雇の予告として有効と認められ、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中労働者が休業した場合は、使用者は解雇が有効に成立する日までの期間、休業手当を支払う必要がある。
よって、問題文は正解となる。
なお、法定の予告期間を設けず、又は法定の予告に代わる平均賃金を支払わないで行った即時解雇の通知は即時解雇としては無効であるが、無効な即時解雇の意思表示であっても使用者が解雇をする意思があり、かつ、その解雇が必ずしも即時解雇であることを要件としていないと認められる場合には、その即時解雇の通知は、法定の最短期間である30日の経過後において解雇する旨の予告として効力を有するものとされている。(昭和24年5月13日基収1483号)

(C)正解
法22条1項、平成11年3月31日基発169号
退職時の証明は、労働者が請求した事項についての事実を記載した証明書を遅滞なく交付してはじめて法22条1項の義務を履行したものと認められるが、労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し労働者の請求に対し遅滞なく交付すれば、基本的には法22条1項違反とはならない。しかし、それが虚偽であった場合(使用者がいったん労働者に示した事由と異なる場合等)には、法22条1項の義務を果たしたことにならないとされている。
よって、問題文は正解となる。

(D)誤り
法22条、平成11年1月29日基発45号、平成15年12月26日基発1226002号
労働者が退職した場合に、退職の事由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならず、また、退職の事由が解雇の場合には、当該退職の事由には解雇の理由を含むこととされている。解雇の理由については、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない。
しかし、解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明を請求した場合、使用者は解雇の理由を証明書に記載してはならず、解雇の事実のみを証明書に記載する義務があるとされている。
よって、「解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合であっても、使用者は、解雇の理由を証明書に記載しなければならない」とした問題文は誤りとなる。

(参考)
1.退職時の証明書は、労働者が次の就職に役立たせる等、その用途は労働者に委ねられているが、離職票は公共職業安定所に提出する書類であるため、退職時の証明書に代えることはできない。(平成11年3月31日基発169号)
2.退職時の証明を求める回数について制限はない。(平成11年3月31日基発169号)

(E)正解
法22条4項、昭和22年12月25日基発502号、平成15年12月26日基発1226002号
使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職時等の証明書に秘密の記号を記入してはならないとされているが、「労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」は制限列挙事項であって、例示ではないとされている。
よって、問題文は正解となる。

  

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