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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成22年労基-第6問(労働基準法に定める年次有給休暇)
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■平成22年労基-第6問(労働基準法に定める年次有給休暇)

労働基準法に定める年次有給休暇に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)労働基準法第39条に定める年次有給休暇の趣旨は労働者の心身のリフレッシュを図ることにあるため、使用者は少なくとも年に5日は連続して労働者に年次有給休暇を付与しなければならない。

(B)労働者の時季指定による年次有給休暇は、労働者が法律上認められた休暇日数の範囲内で具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をし、使用者がこれを承認して初めて成立するとするのが最高裁判所の判例である。

(C)年次有給休暇の時間単位での取得は、労働者の多様な事情・希望に沿いながら年次有給休暇の消化率を高める効果を持ち得るものであるため、労働基準法第39条第4項所定の事項を記載した就業規則の定めを置くことを要件に、年10日の範囲内で認められている。

(D)労働基準法第39条第6項に定める年次有給休暇の計画的付与は、当該事業場の労使協定に基づいて年次有給休暇を計画的に付与しようとするものであり、個々の労働者ごとに付与時期を異なるものとすることなく、事業場全体で一斉に付与しなければならない。

(E)年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由であるが、使用者の時季変更権を無視し、労働者がその所属の事業場においてその業務の正常な運営の阻害を目的として一斉に休暇届を提出して職場を放棄する場合は、年次有給休暇に名をかりた同盟罷業にほかならないから、それは年次有給休暇権の行使ではない。



■解説

(A)誤り
法39条5項
使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならないとされている。(ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。)
そして、「少なくとも年に5日は連続して労働者に年次有給休暇を付与しなければならない。」といった規定は設けられていないため、問題文は誤りとなる。

(B)誤り
法39条、白石営林署事件(昭和48年3月2日最高裁判決)
年次有給休暇の権利は、法定要件を充たした場合法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまってはじめて生ずるものではない。法39条5項の「請求」とは休暇の時季を指定するという趣旨であって、労働者が時季の指定をしたときは、客観的に同項だだし書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしない限り、その指定によって年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である。このように解するならば、年次有給休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」というような観念を容れる余地はないとするのが最高裁判所の判例である。
よって、「使用者がこれを承認して初めて成立するとするのが最高裁判所の判例である」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
法39条4項、平成21年5月29日基発0529001号
まとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇制度本来の趣旨を踏まえつつ、仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定により、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができることとされている。
よって、「年10日の範囲内で認められている」とした問題文は誤りとなる。
なお、労使協定の締結によって時間単位年休を実施する場合には、法第89条第1号の「休暇」として時間単位年休に関する事項を就業規則に記載する必要があることとされている。
また、当該年度に取得されなかった年次有給休暇の残日数・時間数は、次年度に繰り越されることとなるが、当該次年度の時間単位年休の日数は、前年度からの繰越分も含めて5日の範囲内とされている。

(D)誤り
法39条6項、昭和63年1月1日基発1号
年次有給休暇の計画的付与の方式は、事業場全体の休業による一斉付与方式、班別の交替制付与方式、年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式等が認められている。
よって、「個々の労働者ごとに付与時期を異なるものとすることなく、事業場全体で一斉に付与しなければならない」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
法39条、昭和48年3月6日基発110号
年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由である。しかし、労働者がその所属の事業場においてその業務の正常な運営の阻害を目的として一斉に休暇届を提出して職場を放棄する場合は、年次有給休暇に名をかりた同盟罷業にほかならないから、それは年次有給休暇権の行使ではないと解されている。
よって、問題文は正解となる。
なお、このようにいえるのは、当該労働者の所属する事業場で休暇闘争が行われた場合のことであって、他の事業場における争議行為に休暇をとって参加するような場合は、それを年次有給休暇の行使でないとはいえないとされている。

  

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