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トップページ過去問研究室(労働基準法) 平成25年労基-第2問(労働基準法に定める年次有給休暇)
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■平成25年労基-第2問(労働基準法に定める年次有給休暇)

労働基準法に定める年次有給休暇に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

(ア)使用者は、労働基準法第32条の3の規定によりその労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる、いわゆるフレックスタイム制の適用を受ける労働者についても、同法第39条第6項に定める年次有給休暇の計画的付与の対象とすることができる。

(イ)労働基準法第39条の規定による年次有給休暇の期間又は時間については、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又は健康保険法第40条第1項に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する金額(その金額に、5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとする。)のいずれかを、年次有給休暇を取得した労働者の指定するところに従い支払わなければならない。(一部改正)

(ウ)労働基準法第39条に定める年次有給休暇の付与要件の1つである「継続勤務」には、私傷病により休職とされていた者が復職した場合の当該休職期間は含まれない。

(エ)労働基準法第136条の規定において、使用者は、同法第39条の規定による年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはならないことが罰則付きで定められている。

(オ)労働基準法第39条第4項の規定により、労働者が、例えばある日の午前9時から午前10時までの1時間という時間を単位としての年次有給休暇の請求を行った場合において、使用者は、そのような短時間であってもその時間に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げるときは、同条第5項のいわゆる時季変更権を行使することができる。

(A)(アとイ)

(B)(アとオ)

(C)(イとウ)

(D)(ウとエ)

(E)(エとオ)



■解説

(ア)正解
法39条6項、法32条の3
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、その定めにより有給休暇を与えることができることになっているが、この年次有給休暇の計画的付与において、フレックスタイム制の適用を受ける労働者を除く規定は存在しない。
よって、問題文は正解となる。

(イ)誤り
法39条7項、昭和27年9月20日基発675号、平成11年3月31日基発168号
年次有給休暇の賃金の選択は、手続簡素化の見地より認められたものであるから、労働者各人についてその都度使用者の恣意的選択を認めるものではなく、平均賃金と所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金との選択は、就業規則その他によって予め定めるところにより、又健康保険法第40条第1項に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する金額の選択は、労働基準法第36条第1項の時間外労働協定と同様の労使協定を行い、年次有給休暇の際の賃金としてこれを就業規則に定めておかなければならないこと。又この選択がなされた場合には、必ずその選択された方法による賃金を支払わなければならないこととされている。
よって、「年次有給休暇を取得した労働者の指定するところに従い支払わなければならない。」とした問題文は誤りとなる。

(ウ)誤り
法39条、昭和63年3月14日基発150号
継続勤務とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、休職とされていた者が復職した場合も含まれる。この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算することとされている。
よって、「私傷病により休職とされていた者が復職した場合の当該休職期間は含まれない。」とした問題文は誤りとなる。

(参考)
継続勤務とされる例
(1)定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合(退職手当規程に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む。)。ただし、退職と再採用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りではない。
(2)労働基準法第21条各号(解雇予告制度の適用除外)に該当する者でも、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
(3)臨時工が一定月ごとに雇用契約を更新され、6箇月以上に及んでいる場合であって、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
(4)在籍型の出向をした場合
(5)休職とされていた者が復職した場合
(6)臨時工、パート等を正規職員に切替えた場合
(7)会社が解散し、従業員の待遇等を含め権利義務が新会社に包括承継された場合
(8)全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部を再採用したが、事業の実体は人員縮小しただけで、従前とほとんど変わらず事業を継続している場合

(エ)誤り
法136条、第13章
使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされているが、この規定に違反した場合の罰則は規定されていない。
よって、「罰則付きで定められている」とした問題文は誤りとなる。

(オ)正解
法39条、平成21年5月29日基発0529001号
時間単位年休についても、法39条5項の規定により、使用者の時季変更権の対象となるものとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、労働者が時間単位による取得を請求した場合に日単位に変更することや、日単位による取得を請求した場合に時間単位に変更することは、時季変更に当たらず、認められないものである。

※正解の組合せは、(ア)と(オ)であるため、(B)が正解となる。

  

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