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■平成26年労基-第2問(労働基準法に定める解雇)

労働基準法に定める解雇に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)就業規則に定めた定年制が労働者の定年に達した日の翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ、従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然労働関係が終了する慣行になっていて、それが従業員にも徹底している場合には、その定年による雇用関係の終了は解雇ではないので、労働基準法第19条第1項に抵触しない。

(B)労働基準法第20条に定める解雇の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

(C)試みの使用期間中の労働者を、雇入れの日から起算して14日以内に解雇する場合は、解雇の予告について定める労働基準法第20条の規定は適用されない。

(D)労働基準法第19条第1項に定める産前産後の女性に関する解雇制限について、同条に定める除外事由が存在しない状況において、産後8週間を経過しても休業している女性の場合については、その8週間及びその後の30日間が解雇してはならない期間となる。

(E)平成26年9月30日の終了をもって、何ら手当を支払うことなく労働者を解雇しようとする使用者が同年9月1日に当該労働者にその予告をする場合は、労働基準法第20条第1項に抵触しない。



■解説

(A)正解
法19条、昭和26年8月9日基収3388号
就業規則に定める定年制が労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、且つ従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然雇用契約が消滅する慣行となっていて、それを従業員に徹底させる措置をとっている場合は、解雇の問題を生ぜず、したがってまた法19条の問題を生じないものとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、定年制なるものは、個々の企業における労働協約又は就業規則で定められるものであるから、その規定方法や実際の取扱い慣習がまちまちであり、なかには会社の都合や労働者の事情を考慮して定年に達したものをそのまま勤務延長し、あるいは身分を変更して嘱託等として再雇用し、引き続き使用している場合がみられるが、このような取扱いをしている場合には、定年に達した後も労働者は引き続き雇用されることを期待することとなり、特に使用者からそのような例外的取扱いをしないことが明示されるまでは定年後の身分が明確にならないことになるため、このような場合の定年制は、定年に達したときに解雇することがあるという解除権留保の制度にすぎないものと解され、解雇に関する規定の適用を受けることになる。

(B)正解
法20条2項
使用者が、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならないことになっているが、解雇予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができることになっている。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法21条
試の使用期間中の者を雇入れの日から14日以内に解雇する場合には解雇予告の規定は適用されない。
よって、問題文は正解となる。
なお、試の使用期間中の者でも14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告の規定が適用される。これは、試の使用期間自体を制限するものでないから就業規則等でこれを自由に例えば3か月あるいは6か月と定めることも差し支えないが、そのような長期の試の使用期間の定めであっても、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告制度が適用される。
また、試の使用期間は、労働契約上の一様態であるから、就業規則又は労働契約において明確に定められている必要があり、これを定めずに直ちに本採用した場合は、採用後14日以内であっても解雇予告制度の適用がある。

(D)正解
法19条1項
法65条の産前産後の休業における産後の休業は、出産日の翌日から8週間が法定の休業期間であるからこれを超えて休業している期間は、たとえ出産に起因する休業であっても、法19条1項の「休業する期間」には該当しない。また、産後6週間を経過すれば労働者の請求により就業させることができるが、これにより就業している期間も「休業する期間」には該当しない。したがって、その後30日間の起算日は、産後8週間経過した日又は産後8週間経過しなくても6週間経過後その請求により就労させている労働者についてはその就労を開始した日となる。
よって、問題文は正解となる。
なお、産前の休業は、労働者の請求があった場合にはじめて使用者に付与義務が発生するものであるから出産予定日より6週間(多胎妊娠の場合は14週間。以下同じ)前以内であっても労働者が休業せずに就業している場合には、解雇が制限されない。また、出産予定日前6週間の休業を与えられた後においても分娩が出産予定日より遅れて休業している期間は法65条の産前休業期間と解されるので、この期間も解雇が制限される。

(E)誤り
法20条、民法140条、民法141条
予告期間の計算については、労働基準法に特別規定がないため、一般法である民法の規定が適用されることになり、解雇予告がなされた日は算入されず、その翌日より計算され、期間の末日の終了をもって期間の満了となるので、予告の日と、解雇の効力発生の日との間に、中30日間の期間を置く必要がある。また、30日間は労働日でなく歴日で計算されるので、その間に休日又は休業日があっても延長されない。したがって9月30日解雇(その日の終了をもって解雇の効力発生)するためには遅くとも8月31日には解雇の予告をしておかなければならない。
よって、「同年9月1日」とした問題文は誤りとなる。

  

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