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■平成26年労基-第7問(労働基準法に定める就業規則等)

労働基準法に定める就業規則等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

(ア)労働基準法第89条に定める就業規則とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称である。

(イ)労働基準法第89条に定める就業規則の作成義務等の要件である「常時10人以上の労働者を使用する」とは、 10人以上の労働者を雇用する期間が一年のうち一定期間あるという意味であり、通常は8人であっても、繁忙期においてさらに2、3人雇い入れるという場合も、これに含まれる。

(ウ)労働基準法第89条第1号から第3号までの絶対的必要記載事項の一部、又は、同条第3号の2以下の相対的必要記載事項のうち当該事業場が適用を受けるべき事項を記載していない就業規則は、同条違反の責を免れないものであり、労働基準法第13条に基づき、無効となる。

(エ)労働基準法第32条の3に定めるフレックスタイム制の対象となる労働者については、就業規則において始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨の定めをし、また、フレックスタイム制においてコアタイムやフレキシブルタイムを設ける場合には、これらに関する事項を就業規則で定めておけば、労働基準法第89条第1号に定める「始業及び終業の時刻」の就業規則への記載義務を果たしたものとされる。

(オ)労働基準法第90条に定める就業規則の作成又は変更についての過半数労働組合、それがない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務については、文字どおり労働者の団体的意見を求めるということであって、協議をすることまで使用者に要求しているものではない。

(A)(アとイ)

(B)(イとウ)

(C)(ウとエ)

(D)(エとオ)

(E)(アとオ)

■解説

(ア)正解
法89条
「就業規則」とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称であるとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、就業規則は、事業場における労働者の行動を規律し、労働者はこれに拘束されるという意味で社会規範としての作用をもつことについては、一般に認められているところであるが、就業規則が法的にも労働者を拘束するか否か、及び拘束するとした場合にその法的根拠如何の問題、いいかえれば就業規則の法的性質については種々対立した考え方が示されており、その代表的なものとして法規範説、事実規範説及び契約説がある。

(イ)誤り
法89条
常時10人以上の労働者を使用するとは、時としては10人未満になることはあっても、常態として10人以上の労働者を使用しているという意味である。したがって、常時は8人であっても、繁忙期等においてさらに2、3人雇い入れるという場合は含まれない。また、常時10人以上の労働者を使用しているか否かは、企業単位にみるべきか、個々の事業場単位にみるべきかという問題があるが、例えば、一企業が2つの工場をもっており、いずれの工場も10人未満であるが、二工場を合わせた一企業としてみたときは10人以上となる場合、法89条の規定による就業規則の作成及び届出義務があるか否かが問題になる。この点については、労働基準法は事業に使用される労働者に適用されるものであること、法90条でも就業規則の作成変更手続きとしての労働者の団体的意見の聴取を事業場単位に行わせることとしていることから考えあわせると、事業場単位で判断するべきものと解されている。
よって、「これに含まれる。」とした問題文は誤りとなる。

(ウ)誤り
法89条、昭和25年2月20日基発276号、平成11年3月31日基発168号
労働基準法第89条第1号から第3号までの絶対的必要記載事項の一部又は同条第3号の2以下の相対的必要記載事項中、当然当該事業場が適用を受けるべき事項を記載しない就業規則であっても、その効力発生についての他の要件を具備する限り有効である。ただし、このような就業規則を作成し届出ても使用者の法89条違反の責任は免れないものとされている。
よって、「労働基準法第13条に基づき、無効となる。」とした問題文は誤りとなる。

(エ)正解
法32条の3、法89条、昭和63年1月1日基発1号、平成11年3月31日基発168号
労働基準法第89条は終業規則で始業及び終業の時刻を定めることを規定しているが、フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則において、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨の定めをすれば同条の要件を満たすものであることとされている。その場合、コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)、フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働することができる時間帯)も始業及び終業の時刻に関する事項であるので、それらを設ける場合には、就業規則においても規定するべきものであることとされている。
なお、このことに関して、フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレックスタイム制の趣旨には合致しないものであるとされている。
よって、問題文は正解となる。

(オ)正解
法90条、昭和25年3月15日基収525号
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないことになっているが、「意見を聴く」とは諮問するとの意であり、文字どおり労働者の団体意見を求めるということであって、同意を得るとか協議をするとかということまで要求しているのではない。解釈例規においても「労働組合の意見を聴かなければならないというのは、労働組合との協議決定を要求するものではなく、当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば労働基準法違反とはならないとの趣旨である。」としている。
よって、問題文は正解となる。
なお、使用者は就業規則の届出にあたり、意見を記した書面を添付する必要があるが、就業規則に添付した意見書の内容が、当該就業規則に全面的に反対するものであると、特定部分に関して反対するものであると問わず、又その反対理由の如何を問わず、その効力発生についての他の要件を具備する限り、就業規則の効力には影響ないものとされている。(昭和24年3月28日基発373号)

※誤っているものの組合せは、(イ)と(ウ)であるため、(B)が正解となる。

  

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