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■平成28年労基-第2問(労働基準法に定める労働契約等)

労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A)使用者は、労働者が高度の専門的知識等を有していても、当該労働者が高度の専門的知識等を必要とする業務に就いていない場合は、契約期間を年とする労働契約を締結してはならない。

(B)労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違しているため、労働者が労働契約を解除した場合、当該解除により労働契約の効力は遡及的に消滅し、契約が締結されなかったのと同一の法律効果が生じる。

(C)使用者は、労働者の身元保証人に対して、当該労働者の労働契約の不履行について違約金又は損害賠償額を予定する保証契約を締結することができる。

(D)労働者が、実質的にみて使用者の強制はなく、真意から相殺の意思表示をした場合でも、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

(E)労働基準法第18条第5項は、「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、4週間以内に、これを返還しなければならない」と定めている。



■解説

(A)正解
法14条1項、平成15年10月22日基発1022001号
高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することが可能となるものであり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年であることとされている。
よって、問題文は正解となる。

(B)誤り
法15条2項
明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができるが、本条の「解除」とは、民法の一般の意味における解除、すなわち既存の契約の効力を遡及的に消滅させ、契約が締結されなかったのと同一の法律効果を生じさせるものではなく、労働関係という継続的契約関係を将来に向かって消滅させることをいう。
よって、「契約が締結されなかったのと同一の法律効果が生じる。」とした問題文は誤りとなる。

(C)誤り
法16条
法16条(賠償予定の禁止)は、使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定めているが、本条は、その禁止している違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約の締結当事者としての使用者の相手方を労働者本人に限定していないから、本条が禁止している契約の相手方が労働者自身の場合はもちろん、労働者の親権者又は身元保証人が、労働者の行為について違約金又は損害賠償額の支払義務を負担する場合の契約も含まれ、さらには、労働者が負担義務を負った違約金等の支払について保証する保証人又は連帯債務者の保証契約等も含まれるものと解されている。
よって、「違約金又は損害賠償額を予定する保証契約を締結することができる。」とした問題文は誤りとなる。

(D)誤り
法17条
法17条の前借金その他労働することを条件とする前貸しの債権と賃金の相殺禁止は、使用者の側で行う場合のみを禁止しているのであって、労働者が自己の意思によって相殺することは禁止されていない。
よって、問題文は誤りとなる。
しかし、労働者からの相殺の意思表示がなされた形式がとられている場合であっても、実質的にみて使用者の強制によるものと認められるときは、やはり本条違反が成立するものと解されている。

(E)誤り
法18条5項
使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならないと定められている。
よって、「4週間以内」とした問題文は誤りとなる。

  

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