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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成27年労災-第3問(業務災害及び通勤災害)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成27年労災-第3問(業務災害及び通勤災害)

業務災害及び通勤災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)勤務時間中に、作業に必要な私物の眼鏡を自宅に忘れた労働者が、上司の了解を得て、家人が届けてくれた眼鏡を工場の門まで自転車で受け取りに行く途中で、運転を誤り、転落して負傷した場合、業務上の負傷に該当する。

(B)会社の休日に行われている社内の親睦野球大会で労働者が転倒し負傷した場合、参加が推奨されているが任意であるときには、業務上の負傷に該当しない。

(C)配管工が、早朝に、前夜運搬されてきた小型パイプが事業場の資材置場に乱雑に荷下ろしされていたためそれを整理していた際、材料が小型のため付近の草むらに投げ込まれていないかと草むらに探しに入ったところ、その草むらの中に棲息していた毒蛇に足を咬まれて負傷した場合、業務上の負傷に該当する。

(D)業務終了後に、労働組合の執行委員である労働者が、事業場内で開催された賃金引上げのための労使協議会に6時間ほど出席した後、帰宅途上で交通事故にあった場合、通勤災害とは認められない。

(E)会社からの退勤の途中で美容院に立ち寄った場合、髪のセットを終えて直ちに合理的な経路に復した後についても、通勤に該当しない。



■解説

(A)正解
法7条1項、昭和32年7月20日基収3615号
労働者の行為ないし行動には、直ちに担当業務行為とはいえないが、さりとて単なる私的行為ともいえない性質のものがあり、それが労働関係の状況、当該労働者の生活関係等に応じて、さまざまなかたちをとって現われる。それが、事業主の特別の業務命令等により積極的に是認されている場合には、その行為自体が担当業務行為となるのであるが、このような事業主からの積極的な是認を受けていない場合は、その行為が業務行為に含まれるかどうか、あるいは付随するものかどうかで判断されることになる。
問題文の事例のように作業に必要な私物の眼鏡を自宅に忘れた労働者が、上司の了解を得て、家人が届けてくれた眼鏡を工場の門まで自転車で受け取りに行く途中の事故は業務上の負傷に該当することとされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、自動車修理工が無免許のまま試運転して生じた事故(昭和23年1月15日基発51号)、製材工が作業続行のため電柱のトランス修理中に感電死した場合(昭和23年12月17日基災発243号)、上司の私宅へ人夫確保について報告に行く途中の負傷事故(昭和24年4月8日基収891号)、パンク修理の結果の確認を命ぜられた労働者が独断でエンジン修理のため無免許運転していく途中の事故(昭和26年7月15日基収2826号)、貨物自動車運転手が積荷のために切断された電線を修理する際の感電死(昭和26年12月13日基収5224号)、磨砕場で労働者が工場内の塵を抑えるため散水用の水を運搬中に転倒し、頭部を打撲して死亡した場合(昭和30年1月26日基収6002号)、仕事を終えたのち同僚の食糧運搬を応援し途中で崖下に転落した飯場労働者の死亡(昭和30年11月4日基収5187号)、電柱のクレオソート塗布をしていた電力会社従業員が需要家の要請により動力線の修理中に感電墜落して負傷した場合(昭和31年3月31日昭和30基収4708号)、運転未熟を見かねた他運転手の運転中の転落事故(昭和31年3月31日昭和30基収5597号)、急病の運転手と交替した無免許の助手の運転未熟による事故(昭和32年2月22日基収576号)、運転手が現場を離れている間に対向車を避けるためトラックを移動させようとした無免許の現場事務員の死亡事故(昭和36年12月28日昭36労第61号)、いずれも業務上とされている。
また、トラックの車体検査受検のため検査上へ行き、同所のストーブ煙突取外しを手伝って転落死亡した場合(昭和32年9月17日基収4722号)、無免許で自己の担当業務外のタイヤショベル運転中の砂利採取現場の雑役夫の災害(昭和44年9月30日昭43労第305号)は業務外とされている。

(B)正解
法7条1項、平成12年5月18日基発366号
労働者が運動競技に伴い被災した場合に、これが業務上となるためには運動競技が当該労働者の「業務行為」と認められる必要があるが、その判断基準は次のとおりとされている。
1.対外的な運動競技会
(1)運動競技会出場が、出張又は出勤として取り扱われるものであること。
(2)運動競技会出場に関して、必要な旅行費用等の負担が事業主により行われ(競技団体等が全部又は一部を負担する場合を含む。)、労働者が負担するものではないこと。
なお、労働者が個人として運動競技会に出場する場合において上記(1)及び(2)の要件を形式上満たすにすぎない場合には、事業主の便宜供与があったものと解されることから「業務行為」とは認められない。
2.事業場内の運動競技会
(1)運動競技会は、同一の事業場又は同一企業に所属する労働者全員の出場を意図して行われるものであること。
(2)運動競技会当日は、勤務を要する日とされ、出場しない場合には欠勤したものとして取り扱われること。
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法7条1項、昭和27年9月6日基災収3026号
作業中に発生した災害は、大部分が業務災害であると思われるが、災害発生の具体的事情によって、果たして業務に従事していたといえるかどうか、業務に従事していたとしてもその災害が業務外の事由によって生じたものでないかどうかを考えて業務上外の認定をする必要がある。
問題文の事例のように、作業中、草むらの中に棲息していた毒蛇に足を咬まれて負傷した場合は、業務上の負傷に該当することになる。
よって、問題文は正解となる。
なお、電車の発車に際し乗客満員のためやむなく連結機に飛び乗ろうとして転落死した車掌の場合(昭和25年5月11日基収1391号)、上司の雑用をしていた用務員の感電死(昭和25年11月10日基収3237号)、野菜採取中に隣家の馬に蹴られた農業労働者の死亡(昭和34年4月28日基収141号)、建築作業中の突風による建物倒壊による負傷(昭和26年9月27日基災収1798号)、強要されて道路工に運転させたために生じた運転手の事故(昭和30年5月21日基収457号)、就業時間中に寒冷のため作業場のストーブの傍に寄ったところ貧血を生じて昏倒し火傷により死亡した場合(昭和38年9月30日基収2868号)はいずれも業務上とされた。
また、泥酔してトラックから転落した助手の死亡(昭和24年7月15日基災収3845号)、顔見知りの他人の興味に応じて運転をさせて生じた事故による砂利トラック運転手の負傷(昭和26年4月13日基収1497号)、人員整理に関し会社と労働組合との抗争中に被解雇者が強行就労し、作業中に負傷した場合(昭和28年12月18日基収4466号)は、いずれも業務外の負傷とされている。

(D)正解
法7条2項、昭和50年11月4日基収2043号
業務終了後、事業場施設内で、囲碁、麻雀、サークル活動、労働組合の会合に出席した後に帰宅するような場合には、社会通念上、就業と帰宅との直接関連性を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除き、就業との関連性が認められる。
認定上問題となった例としては、業務終了後事業場施設内で約2時間5分労働組合の用務を行った後に帰宅する途中の災害、業務終了後55分間事業場施設内で慰安会を行った後に帰宅する途中の災害は、いずれも就業との関連性を認められた。
一方、業務終了後、事業場施設内でサークル活動を行った後に帰宅する途中の災害について、サークル活動に要した2時間50分は、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間であるとされた。
よって、問題文は正解となる。

(E)誤り
法7条2項、昭和58年8月2日基発420号
通勤の途中において、労働者が逸脱、中断をする場合には、その後は就業に関してする往復行為というよりも、むしろ、逸脱又は中断の目的に関してする行為と考えられるので、その後は一切通勤とは認められないこととなるのであるが、これについては、通勤の実態を考慮して、法律で例外が設けられ、通勤の途中で日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度の範囲で行うために逸脱又は中断をする場合には、当該逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は通勤と認められることとされている。
そして、帰途で惣菜等を購入する場合、独身労働者が食堂に食事に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、理美容院に立ち寄る場合等は厚生労働省令で定める「日用品の購入その他これに準ずる行為」に該当するものとされている。
よって、「直ちに合理的な経路に復した後についても、通勤に該当しない。」とした問題文は誤りとなる。

  

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