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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成28年労災-第3問(通勤災害)
■社会保険労務士試験過去問研究室




■平成28年労災-第3問(通勤災害)

通勤災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(A)商店が閉店した後は人通りがなくなる地下街入口付近の暗いところで、勤務先からの帰宅途中に、暴漢に後頭部を殴打され財布をとられたキャバレー勤務の労働者が負った後頭部の裂傷は、通勤災害と認められる。

(B)会社からの退勤の途中に、定期的に病院で、比較的長時間の人工透析を受ける場合も、終了して直ちに合理的経路に復した後については、通勤に該当する。

(C)午前の勤務を終了し、平常通り、会社から約300メートルのところにある自宅で昼食を済ませた労働者が、午後の勤務に就くため12時45分頃に自宅を出て県道を徒歩で勤務先会社に向かう途中、県道脇に駐車中のトラックの脇から飛び出した野犬に下腿部をかみつかれて負傷した場合、通勤災害と認められる。

(D)勤務を終えてバスで退勤すべくバス停に向かった際、親しい同僚と一緒になったので、お互いによく利用している会社の隣の喫茶店に立ち寄り、コーヒーを飲みながら雑談し、40分程度過ごした後、同僚の乗用車で合理的な経路を通って自宅まで送られた労働者が、車を降りようとした際に乗用車に追突され負傷した場合、通勤災害と認められる。

(E)マイカー通勤をしている労働者が、勤務先会社から市道を挟んだところにある同社の駐車場に車を停車し、徒歩で職場に到着しタイムカードを押した後、フォグライトの消し忘れに気づき、徒歩で駐車場へ引き返すべく市道を横断する途中、市道を走ってきた軽自動車にはねられ負傷した場合、通勤災害と認められる。



■解説

(A)正解
法7条、昭和49年6月19日基収1276号
「通勤による」とは通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいい、具体的には、通勤の途中において、自動車にひかれた場合、電車が急停車したため転倒して受傷した場合、駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合等、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められる。しかしながら、自殺の場合、その他被災者の故意によって生じた災害、通勤の途中で怨恨をもってけんかをしかけて負傷した場合などは、通勤をしていることが原因となって災害が発生したものではないので、通勤災害とは認められない。
問題文の事例の場合は、女子労働者が、夜遅い時間に、暗く人通りの少ない大都市周辺の住宅散在地域を通勤する途中においてひったくりや暴漢におそわれて負傷しており、通勤災害と認定された。
よって、問題文は正解となる。
なお、マイカー通勤者が帰宅途中、同僚を乗せようとした際、強風のため右手をドアにはさまれて負傷した場合、同じくマイカー通勤をする労働者が、帰宅途中、前の自動車の発進を促すためクラクションを鳴らした時に、それに立腹した者により射殺された場合(昭和52年12月23日基収1032号)、自転車通勤中の労働者が通行の妨げになるオートバイを道端に移動しようとして負傷した場合、大雨により浸水した経路を帰宅する途中転倒、溺死した場合(昭和50年4月7日基収3086号)、出勤途中野犬にかまれて負傷した場合(昭和53年5月30日基収1172号)、ビルの屋上から落下してきた人のまきぞえによる災害(昭和56年10月9日昭和55第119号)が、いずれも通勤によるものと認められたが、マイカー通勤者が同僚の自動車をけん引中の災害は通勤によるものと認められなかった。

(B)正解
法7条、法7条3項、則8条、平成20年4月1日基発0401041号
通勤経路を逸脱し又は中断した場合は、逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤に該当しないが、逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除いて通勤となる。
そして厚生労働省令で定める日常生活上必要な行為は次のように定められている。
(1)日用品の購入その他これに準ずる行為
(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
(5)要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)
よって、問題文は正解となる。

(C)正解
法7条、昭和53年5月30日基収1172号
「通勤による」とは通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいい、具体的には、通勤の途中において、自動車にひかれた場合、電車が急停車したため転倒して受傷した場合、駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合等、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められる。しかしながら、自殺の場合、その他被災者の故意によって生じた災害、通勤の途中で怨恨をもってけんかをしかけて負傷した場合などは、通勤をしていることが原因となって災害が発生したものではないので、通勤災害とは認められない。
また、通勤は1日について1回のみしか認められないものではないので、昼休み等就業の時間の間に相当の間隔があって帰宅するような場合には、昼休みについていえば、午前の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤するものと考えられるので、その往復については業務との関連性が認められる。
問題文の事例の場合は、通勤災害に該当することとされた。
よって、問題文は正解となる。
なお、マイカー通勤している労働者が、昼休み時間を利用して勤務先で食事をとった後、近くに来ていた妻子を自宅まで送る途中の災害(昭和49年5月27日基収1371号)は通勤災害に該当しないものとされた。

(D)誤り
法7条、昭和49年11月15日基収1867号
通勤経路を逸脱し又は中断した場合は、逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤に該当しないが、逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除いて通勤となる。
そして厚生労働省令で定める日常生活上必要な行為は次のように定められている。
(1)日用品の購入その他これに準ずる行為
(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
(5)要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)
問題文の事例の場合、帰宅途中に経路上の喫茶店に立ち寄り40分程度過ごした行為は、「逸脱」又は「中断」に該当し、又、「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うための最少限度のもの」に該当しないため合理的な経路にもどった後の移動についても通勤には該当しない。
よって、「通勤災害と認められる。」とした問題文は誤りとなる。

(E)正解
法7条、昭和49年6月19日基収1739号
「通勤による」とは通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいう。
問題文の事例の場合、マイカー通勤者が車のライトの消忘れなどに気づき駐車場に引き返すことは一般にあり得ることであって、通勤とかけ離れた行為ではなく、また、いったん事業場構内に入った後であっても、まだ時間の経過もほとんどないことなどから通勤災害と認められた。
よって、問題文は正解となる。

  

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