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トップページ過去問研究室(労災保険法) 平成28年労災-第5問(業務災害及び通勤災害)
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■平成28年労災-第5問(業務災害及び通勤災害)

業務災害及び通勤災害に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

(ア)業務上の疾病の範囲は、労働基準法施行規則別表第一の二の各号に掲げられているものに限定されている。

(イ)業務に従事している労働者が緊急行為を行ったとき、事業主の命令がある場合には、当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、その行為は業務として取り扱われる。

(ウ)業務に従事していない労働者が、使用されている事業の事業場又は作業場等において災害が生じている際に、業務に従事している同僚労働者等とともに、労働契約の本旨に当たる作業を開始した場合には、事業主から特段の命令がないときであっても、当該作業は業務に当たると推定される。

(エ)業務上の疾病が治って療養の必要がなくなった場合には、その後にその疾病が再発しても、新たな業務上の事由による発病でない限り、業務上の疾病とは認められない。

(オ)労災保険法第7条に規定する通勤の途中で合理的経路を逸脱した場合でも、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱の間も含め同条の通勤とする。

(A)一つ

(B)二つ

(C)三つ

(D)四つ

(E)五つ

■解説

(ア)正解
法7条1項、労基則35条、労基則別表1の2、昭和56年2月2日労働省告示第7号(改正 平成12年12月25日労働省告示第120号)
業務上の疾病の範囲は、労基則別表1の2及びこれに基づく告示において定められており、このいずれにも該当しないものは業務上の疾病と認められないことになっている。
よって、問題文は正解となる。
なお、労基則第35条及び別表第1の2並びに告示においては、一定の疾病を例示列挙するとともに包括的な救済規定を補足的に設けるいわゆる「例示列挙主義」を堅持している。したがって、業務上疾病の範囲を具体的に掲げられた疾病に限定するものではなく、列挙疾病以外の疾病であっても業務との相当因果関係が認められるものは、包括的救済規定によって災害補償又は労災保険給付の対象となることは当然である。(昭和53年3月30日基発186号)

(イ)正解
法7条、平成21年7月23日基発0723第14号
労働者が業務に従事している場合に緊急行為を行ったときで、事業主の命令がある場合には、緊急行為は、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、私的行為ではなく、業務として取り扱うこととされている。
よって、問題文は正解となる。
なお、事業主の命令がない場合については、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、私的行為ではなく、業務として取り扱うこととされている。
また、次の@〜Bの3つの要件を全て満たす場合には、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、私的行為ではなく、業務として取り扱うこととされている。
@労働者が緊急行為を行った(行おうとした)際に発生した災害が、労働者が使用されている事業の業務に従事している際に被災する蓋然性が高い災害、例えば運送事業の場合の交通事故等に当たること。
A当該災害に係る救出行為等の緊急行為を行うことが、業界団体等の行う講習の内容等から、職務上要請されていることが明らかであること。
B緊急行為を行う者が付近に存在していないこと、災害が重篤であり、人の命に関わりかねない一刻を争うものであったこと、被災者から救助を求められたこと等緊急行為が必要とされると認められる状況であったこと。

(ウ)正解
法7条、平成21年7月23日基発0723第14号
労働者が、業務に従事していない場合に緊急行為を行ったときで、事業主の命令がある場合には、緊急行為は、同僚労働者等の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものか否かにかかわらず、私的行為ではなく、業務として取り扱うこととされている。
また、事業主の命令がない場合には、業務に従事していない労働者が、使用されている事業の事業場又は作業場等において災害が生じている際に、業務に従事している同僚労働者等とともに、労働契約の本旨に当たる作業を開始した場合には、特段の命令がないときであっても、当該作業は業務に当たると推定することとされている。
よって、問題文は正解となる。

(エ)誤り
法13条、昭和23年1月13日基災発3号
療養の給付の期間については、その傷病が療養を必要としなくなるまで行われ、いったん療養を必要としなくなった場合もその後再び当該傷病につき療養を必要とするに至った場合(いわゆる再発)は、再び給付を受けられる。よって、「業務上の疾病とは認められない。」とした問題文は誤りとなる。
しかしながら、症状が残っていてもそれが安定して、もはや治療の効果が期待できず、療養の余地がなくなった場合には療養の必要がなくなったもの(治ゆ)とされる。
なお、治ゆとは、症状が安定し、疾病が固定した状態にあるものをいうのであって、治療の必要がなくなったものである。すなわち、負傷にあっては創面の治ゆした場合(しかし、個々の障害の症状によっては、その治ゆの限界が異なることはありうる。)、疾病にあっては急性症状が消退し慢性症状は持続しても医療効果を期待し得ない状態になった場合等をいう。

(オ)誤り
法7条3項、則8条、平成20年4月1日基発0401041号
通勤経路を逸脱し又は中断した場合は、逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤に該当しないが、逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除いて通勤となる。
そして厚生労働省令で定める日常生活上必要な行為は次のように定められている。
(1)日用品の購入その他これに準ずる行為
(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
(5)要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)
よって、「当該逸脱の間も含め」とした問題文は誤りとなる。

※正解は、(ア)(イ)(ウ)であるため、(C)が正解となる。

  

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